2つ目が、「新入社員主体のプロジェクト」を4月から実施したことだ。リモート環境では、人事部以外の社員とはなかなかつながりが生まれにくい。そこで、社内のあらゆる社員とつながれるように、ITチームと連携した新卒ページの作成や、先輩社員との座談会や役員とのつながりをつくれるSlackの環境設定、テレワークの作法やノウハウを社内のイントラで発信するなどのプロジェクトが作られたという。
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テレワークに関するノウハウを作成した新入社員の山本恭平さんは、「プロジェクトを通じて、PDCAを回したり、タスク管理を行ったりと、リモートではあるものの、研修を通じてビジネスの基本が気づいたら身に付いていたり、先輩社員との交流も生まれていた感覚だった」と語る。
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そして3つ目の工夫が、「配属時のガイドライン」を作成し、各現場の育成担当者に配布した点だ。
今年は現場に配属後もリモート環境で新入社員を教育しなければならず、育成担当者の中にはどう彼らを育てたらいいのか、不安に思った人もいるだろう。
そこで同社では、育成担当者向けに、オンライン上でのコミュニケーションの取り方なども含めた研修カリキュラムを用意。そのうえで、新入社員研修では何を行ってきたか、ツールはどのようなものを選ぶべきか、さらにテレワークと対面でのコミュニケーションの取り方の違いなどを説明したという。
「相手の様子が見えないテレワークでもコミュニケーションを円滑にするために、午前と午後で2回以上、カメラをONにしての定例を入れるようにするなどのお願いをした。また、3カ月間の研修での経験から、集中できる環境づくりとして『一人で考える時間』も取ってもらえるようにしている」(アスクル人事総務本部新入社員教育担当・多田双葉さん)
実際に配属先で仕事を始めた新入社員の菅原萌々佳さんは「テレワークだと先輩社員が何をしているのか分からないため、話しかけるのに緊張したが、忙しい時でも『ちょっと待ってね』などと返事をくれるので、とても安心して話しかけられた」と語る。
リモート環境ではずっと自宅で研修を受け、仕事をしているため、実際に出勤する場合よりも孤独になりやすい。そこで、新入社員研修と配属先後も一貫して、「人事部、上司や先輩は、あなたたちのことを見ているよ」というコミュニケーションを積極的に取り、その中でも自然と彼らがビジネスパーソンとしての基礎を見つけられるようなプログラムが、アスクルでは効果的に機能したようだ。