今年の新入社員はフルリモートで新人研修を終え、そのまま現場に配属されたケースも少なくない。そんな彼らが配属された先の上司や教育担当の先輩社員は今、戸惑いながら新人教育を行っていることだろう。では、テレワーク下でも彼らを一人前に育てるには、どんな点に気をつければいいのか。新入社員や若手の育成に詳しいリクルートマネジメントソリューションズの桑原正義・主任研究員に話を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・セレクト編集部 林恭子)
「何かあったら相談して」と
新人に言った上司・先輩は要注意
――今年は、入社後即テレワークという新入社員が少なくありません。それによる影響をどう見ていますか。
会社によって違いはありますが、新入社員、配属先の上司や先輩、人事担当者の皆さんともに不安を抱えているのは同じだと思います。新入社員は、先輩たちと同じような研修が受けられずこのままで大丈夫なのか、仕事ができるのか。上司や先輩は、例年のような準備ができない中でちゃんと育てられるか。人事はオンラインでの新人育成をどうすればいいのか。そうした不安をたくさん抱えています。
今は新入社員が配属されて2、3カ月で、彼らの成長度合いが見えてくるのは秋頃からになるでしょう。今後、今年は例年よりも新人が育っていないという心配が生まれてくるかもしれません。
――テレワーク下での新入社員に対する上司世代や先輩社員のどういった行動が、教育に悪影響を及ぼす可能性がありますか?
受け入れ先の上司や新人育成の担当者の方にお伝えしたいのは、「何かあったら相談して」といった受け身の関わり方は非常にリスクがあるという点です。
新入社員にとって、上司や先輩に相談したり、話しかけたりするのは、リアルな職場でも心理的負担感が大きいものです。特に昨今の新人世代は、迷惑をかけたくない、こんなことを聞いてダメだと思われたりしないかなど、人からどう思われるかに関する感覚が発達していて、以前と比べて報連相が起こりにくい傾向があります。ましてや今はテレワーク下。目の前の上司や先輩たちの状況が見えないので、より話しかけるハードルが高くなっています。それなのに今までと同様に「いつでも聞いて」「何かあったら声かけて」と言っても報連相は生まれません。
それに対して上司や先輩が「新人は何も言ってこないから大丈夫だ」と思っていたら、実際は困っていたり、この先はやっていけるのか不安になっていたりする恐れがあります。
テレワーク下でのマネジメントは、ルールを具体的にするのがポイントです。例えば、「毎日1回、状況を報告してね」「こういう風になったら連絡してください」など具体性があった方が、新入社員はアクションしやすくなります。「何かあったら」という抽象的なものでは行動しづらく、相手と合意が取れている状況だと思えれば不安なく連絡できるのです。
昨今の新入社員の良いところは、「素直さ」です。しっかり確認や合意をしておけば、その通り行動してくれる傾向があります。ですから、まずは上司・先輩と新入社員で話し合って、「こういう風にコミュニケーションを取ろう」など、なるべく具体的に認識を合わせれば良い関係が築けるでしょう。