コロナ禍において、美術館の閉鎖や演劇の中止など、アートは窮地に立たされている。しかし、コロナ禍を経て、新しい社会を創出するためのヒントが日本のアートにあるのではないか。ビジネスエリートが激動の時代を生き抜くヒントを世界情勢、宗教、哲学などに学ぶ月1回の特別講義シリーズ。第4回は、日本のアートを洞察して見えてきたコロナ禍を生き抜くための考え方を解説する。(神戸情報大学院大学教授/国際教養作家・ファシリテーター 山中俊之)

コロナ禍で見直されるアートの重要性

神奈川沖浪裏
葛飾北斎の『神奈川沖浪裏』 Photo:Buyenlarge/gettyimages

 美術館・博物館の閉鎖、演劇やコンサートの中止や延期…。コロナ禍でアートの重要性を認識した人は、世界的に見て多かったのではないだろうか。普段は当然と思っていることが、突然なくなってしまう。なくなってしまって初めて気づくことも多い。コロナ禍におけるアートはその一つの典型であろう。

「アフターコロナの時代がどうなっていくのか」
「それに向けて、我々は何をすべきか」

 世界の多くの人が関心を抱いている問いである。私は、この問いに関する答えが、日本のアートにあるのではないかと考えている。

「美しさに感動するためのアートにそんな答えがあるのか」といぶかしがる人もいることだろう。しかし、アートは、単に美しさに感動したり、癒やしを求めたりするためだけにあるのではない。

 世界的な名声を得ている前衛芸術家の草間彌生氏は、

「自分の芸術の力を信じて何十年も闘ってきました。自分の生命の在りどころを芸術の求道に置いて、人間の素晴らしさや生きていくことへの深い憧れが、ようやく出てきた(略)」(『VOGUE 2017年2月17日 「草間彌生が語る、愛とアートに生きる理由」』)

 と語っている。

 アートは、人間や社会のあり方、その素晴らしさについて、深く思想に富んだ洞察を示すものなのだ。