地銀再編の最大の障害とは?
「半沢直樹」で銀行員が固執したアレ

「地銀の経営基盤を強化するには地銀同士の統合が必要だ」と言われながら、その進展が極めて遅かったことの理由として、独占禁止法と公正取引委員会の方針が障害になっているとの見方があった。象徴的なのは、県内地銀同士である十八銀行と親和銀行の合併が認められるまでに2年以上の時間を要した長崎県のケースだった。

 しかし、今年の5月に地銀同士の統合・合併を独占禁止法の適用除外とする特例法が成立するなど、独禁法は地銀再編の障害とはならなくなった。

 独禁法以上に地銀の統合の障害となっているのは、ズバリ言って「人事」だ。銀行の経営統合では表面上「対等」を強調しても、力関係で劣って実質的に吸収される側の銀行は人事で不利な立場に立つ。銀行員が半ばマンガのように人事に固執する様は、ドラマ「半沢直樹」の設定の中で重要な背景となっていたが、まさにあの「人事」が問題なのだ。

 銀行員は主に同期や近い世代の行員が相対的な競争をすることによって、人事評価の得点を貯めるゲームを長年にわたって繰り広げる。特に、合併で劣位に立つ側の銀行の行員は、今まで貯めてきた人事上の得点がご破算となる。例えば役員になる予定だった人物が、役員のいすを取り損なうようなケースが頻発する(経営トップ「のみ」が形の上で「会長」などに祭り上げられて世間的体面と名誉を得られる場合が多い)。

 経営統合の可能性が浮上したとき、劣位側の可能性がある銀行の行員は必死にこれを避けたいと思う。特に、経営方針に関わるような幹部行員が自分の出世の可能性を経営統合で棒に振るようなことを避けたいと考えるので、銀行の再編は前に進みにくい構造になっている。

 これまでの政策や経緯からして、菅首相は官僚に対しても、また学者に対してさえ、「人事」が有効であることを熟知しているはずだ。もちろん、民間企業である銀行の人事に手を突っ込むことは難しいだろうから、監督官庁等を通じた間接的な働きかけになるのだろうが、菅政権はどのような手を編み出すだろうか。経営トップの1〜2人に対して一定の条件を満たさなければ退任を迫るようなプレッシャーを掛け、一方で経営統合に進んだ場合、トップ本人の立場が守られるような「硬軟」をうまく使い分けることができれば、業界再編が進むだろう。