2010年第1回目は、昨年同様、今年がどういう年であってほしいかを論じたい。
昨年は、『20年に渡る日本政治の対立「政界再編(による保守政権の存続)」VS「政権交代(のある民主主義の実現)」が決着する年』と書いた(第14回)。そして8月31日、遂に政権交代は起こった。この政権交代で、国民が「失政を犯した政権を選挙で交代させること」を知った意義は大きい(第34回)。
たとえ今後、自民党が政権の座に戻ることがあっても、「失政を犯せば政権の座から降ろされる」という緊張感から逃れられることはない。鳩山政権がどうなろうと、「政権交代ある民主主義」は完成した。昨年は、「政権交代派」の完全勝利に終わった年だった。
それでは2010年であるが、「世代交代」と「国家戦略」の2つをテーマに論じたい。
政界の世代交代を進め、
それを社会全体に広げる年に
この連載では、政界の世代交代の重要性を繰り返し訴えてきた。民主党では、リーダーが60代の鳩山由紀夫さんで、表面的には世代交代は起こっていない。しかし、鳩山政権の誕生で閣僚・副大臣・政務官の「政務三役」に、前原誠司国交相、長妻昭厚労相、原口一博総務相、小沢鋭仁環境相、古川元久・大塚公平内閣府副大臣、野田佳彦財務副大臣、鈴木寛文科副大臣、馬渕澄夫国土交通副大臣、山井和則厚生労働政務官、長島昭久防衛政務官などの若手が起用された。
彼らは高い政策立案能力を生かして、徐々に政権内で主導権を握りつつある。その上、通常国会で小沢一郎幹事長が推進する通り、国会の常任委員会が活性化すると(第38回)、委員会に所属する若手議員も台頭してくる。今年、民主党の世代交代は、政策立案の実務を通じて相当に進むだろう。
一方、この連載では自民党について、世代交代に活路を求めるしかないと主張してきた。だが、残念ながら河野太郎氏を除いて、世代交代に立ち上がる若手政治家がいない。それどころか、下野後の総裁選では長老が次々と復権した。
ただ、自民党内にも希望はある。石破茂政調会長が国会の委員会に若手を起用する方針を打ち出していることだ(第34回)。かつて自民党を離党した経験があり、「政権交代ある民主主義」に見識を持っている石破政調会長が、小沢幹事長の国会運営改革とうまくかみ合えば、興味深い動きが起こる可能性がある。