行政側の懇切丁寧な対応が多文化共生のカギ

 FRESCに入居している出入国在留管理庁は、現在、外国人向けの一元的相談窓口の設置・運営を促進し、全都道府県・市区町村の地方公共団体を対象に、交付金の交付を行っている。

「地方自治体が、外国人からの相談をワンストップで引き受ける窓口をつくった場合は、設置の段階で、『整備費』として必要経費の10分の10を、運用の段階では、『運営費』として必要経費の2分の1を国が出すことになっています。令和2年度(2020年度)の実績としては、9月現在で、189の自治体に交付が決定しています。

 FRESCのヘルプデスクにも、『生活のためのお金に困っています』とか『病院にかかりたいけど、通訳がいないので困る』といった、毎日の生活に密着した相談事があります。そうした生活相談の多くは、私たちFRESCの入居機関では対応できないものです。そうした相談への対応は自治体で対応していることが多いので、自治体につなぐことになります。

 その際、まずどこに相談に行けばよいのかわからないということがないようにするために、自治体にも、ワンストップの相談窓口が設置されることが望ましいと考えます。市役所の○○課に相談に行った外国人が『それはうちじゃない』とたらい回しにされるのを避けるためにも、まずは一元化した窓口で話を聞き、ある程度まで答えたうえで、担当者につないでいくことが望まれます。そうした対応ができている自治体も多いですが、『今後増えていく外国人に備えていきたい』という、これからの自治体もあります。そうした自治体が参考にできるような実例の共有もFRESCで行っていきたいと考えています」

 たとえば、日本人が海外旅行で何かのトラブルに遭ったとき、渡航国の行政機関に冷たくあしらわれたら絶望的な気分になるだろう。その国で生活している場合はなおさらで、受け入れ側の懇切丁寧な対応が多文化共生のカギになっていく。

「外国人が清水の舞台から飛び降りるほどの思いで窓口に行き、『ここではない』と突き放されたら、日本という国自体を嫌いになるかもしれません。私たちがいちばん避けるべきは、日本で暮らす外国人を嫌な思いで帰国させてしまうことです。日本に対して良い思いがない(嫌な思いを持っている)外国人は、帰国しても、二度と日本に行きたいとは思わなくなるでしょうし、母国の友人が訪日すると知ったときにあまり良い話はしないでしょう。行政機関は相談案件の『たらい回し』をせずに、できるだけ親身に外国人の話を聞くことが重要です。

 もちろん、案件によってはすぐに解決できるものとできないものがありますが、いずれにしても、きちんとした対応が必要です。ワンストップはそのための有効な手段であり、一元化した窓口での連携した対応や関係する機関(担当部署)にしっかりとつないで相談対応を途切れないようにすることが、悩みを抱えた外国人の問題解決を進めていくと考えます」