主要国の首脳が軒並み代わる2012年、その末尾に日本の首相交代が加わるか注目されていたが、越年の公算が大きくなった。民主党幹事長に輿石東氏が再選され、野田佳彦首相(民主党代表)の口約束「早期解散」が棚上げされそうだ。衆参同日選挙という観測さえ広がっている。
谷垣氏の降板が
野田氏延命の伏線
細野豪志原子力担当相が民主党代表選に出ていれば、野田首相は胸を張って国連総会に臨むことさえできなかっただろう。細野氏も直前までやる気を見せていた。一転して「不出馬」になった火元は、自民党にあった。
谷垣禎一総裁が引きずり降ろされたことが、野田氏の延命につながったのである。実はこのことが「解散先送り」の伏線になっている。
ちょっと分かりにくいがこういうことだ。民主党内部では野田氏が首相でいるかぎり、谷垣氏との間で交わした「早期解散」の約束に縛られる。野田代表のまま総選挙に臨めばボロ負けする。解散を先に延ばすには野田氏を首相から降ろすしかない。そんな思惑から細野擁立が起きた。
解散先延ばしの筆頭が輿石幹事長だ。輿石氏周辺は細野氏を担いで野田降ろしを画策した。8月31日の夜、赤坂の土佐料理屋で輿石氏を囲む議員の集まりがあり、その場で高島良充元参議院幹事長が、細野氏に代表選に出るように口説いた。「細野なら選挙の顔になる」と擁立が広がり、野田氏を降ろして解散を先送りしたい、という議員心理が動きを加速した。
2日後、局面は急転する。自民党で谷垣氏の後ろ盾のはずだった古賀誠元幹事長が谷垣氏不支持を表明する。元首相の森喜朗氏も「不支持」を表明。同じ日、総裁を支える幹事長の石原伸晃氏が「谷垣さんを支えてきたが、谷垣さんを支えるために政治をやって来たわけではない」と発言。「谷垣降ろし」の火の手が上がった。
「近いうちに解散」という野田氏の言葉は、谷垣氏との約束だった。敢えて言えば谷垣氏が引きつづき自民党総裁に留まることを、側面支援する約束だった。