主戦場の予算委員会で早くも発火、衆院解散を巡る与野党攻防の内幕11月11日、衆院本会議で首相指名選挙の開票結果を聞く立憲民主党代表の野田佳彦(中央) Photo:JIJI

 11月11日に召集された特別国会の衆院本会議場の光景は自公惨敗をくっきりと浮かび上がらせた。議場の大半を占めていた自民党席は大幅に縮小し、野党第1党の立憲民主党が大きな面積を占めた。次の首相を決める首相指名選挙も1度では決まらず決選投票に持ち込まれた。

 議長席を挟んで左右に設けられているひな壇と呼ばれる閣僚席の前には、決選投票に残った2人の議員名が書かれた紙が掲げられた。「石破茂君」「野田佳彦君」。結果は石破221票、野田160票で石破が第103代の首相に選出された。決選投票での決着は30年ぶり。ただ、30年前の衆院本会議場を支配した緊迫した空気とは懸け離れていた。30年前は勝者の見通しがないままの文字通りの決選投票だったのに対して、石破の選出はあらかじめ仕組まれたシナリオ通りの結末を迎えたからだ。

 30年前の決選投票で首相に選出されたのは、当時の社会党委員長の村山富市。前年の衆院選で野党に転落した自民党が政権復帰をもくろみ、新党さきがけを巻き込んで水と油の関係といわれた社会党の村山を担ぎ上げた。自民党内にも社会党との連立に強い異論、反論が存在した。

 その自民党内に生じた亀裂に乗じるように、新生党の小沢一郎が自民党を離党させた元首相の海部俊樹を擁立した。非自民連立政権の継続と自民党分断の一石二鳥を狙った奇策だった。衆院の議院運営委員会の自民党の理事だった鈴木宗男は本会議開会前に所属議員に対してこんな指示を出した。