「いろいろな選択肢がありましたけど、まずは移籍期限までにヨーロッパで自分が求めているレベルの高い移籍ができなかった、ということですね」

 今年最後の活動としてオーストリアへ遠征している日本代表に招集された長友は、1-0で勝利した日本時間13日のパナマ代表との国際親善試合を前にしたオンライン取材に対応。登録外になる状況がわかっていてもガラタサライに残留した決断を振り返りながら、こんな言葉を紡いでいる。

「いままで自分ができなかったインプットの部分といいますか、自己成長という意味で自分への投資が必要だった時間だと思えたので。それまではガラタサライでもリーグ戦やチャンピオンズリーグに、そして日本代表でもずっと試合に出場させてもらっていたので、なかなかできなかった自分へのインプットというものを、この期間でしっかりやりたいと思って残る決断を下しました」

「自分へのインプット」とは?逆境が大好物

 長友が言及したインプットの正体は、4月に動画投稿サイトYouTubeに開設した公式チャンネルに凝縮されている。新型コロナウイルスで自宅待機が続く状況下で、不得手な料理への挑戦、さまざまなメニューで構成される体幹トレーニング、サッカーについて語るという3テーマを設けた。

 特にサッカーについて語るテーマでは、同じ1986年生まれの盟友で、いま現在はブラジルでプレーする本田圭佑や、日本代表で歴代最多となる通算152試合出場を誇る遠藤保仁、あるいはブラジル、ロシア両ワールドカップでともにプレーした香川真司らとオンラインで対談している。

 積極的に発信、つまりアウトプットしていくことで、それまでの自分が知らなかった考え方に出合い、成長へのヒントをインプットできると長友は考えていた。すべてが新鮮で、刺激的に感じられたからか。ゴールデンウイーク中に古巣FC東京が開催したオンラインイベントに、当時自宅があったイスタンブールからリモート出演した長友は、笑顔を弾ませながら近況を報告している。

「僕、マジで悩みがないんですよ。人間である以上は悩みを含めた感情がありますけど、処理能力がめちゃくちゃ早いと思うんです。それが自分の強みというか、逆境が大好物なんですよね」

 6月30日で満了する契約を、ガラタサライが延長する可能性はほぼゼロだった。実際に退団となり、7月1日からは無所属となった。文字通りの逆境が長友を燃え上がらせ、将来を見渡せない不安や悩みの類は、急がば回れという思考回路のもとで背中を押すエネルギーへと変換されていく。