手放しがたい「頑張ってきた過去の自分」

 数あるものの中で人が最も手放しがたいのは、財産でも、肩書でも、人脈でもありません。過去に頑張ってきた自分自身です。

 かつての僕と同じように、「せっかくここまでやってきたんだから」という理由で、何かを我慢したことはありませんか。

 例えば、異業種への転職に悩んでいる時。「新卒から働いて10年。ここまでの時間とお金と労力をかけて蓄積してきたものを捨てるなんてもったいない。やっぱり転職はやめよう」なんて踏みとどまるのは、よくある話です。

 もちろん、踏みとどまってもいいんです。でも、あなたの心の声が本当はやってみたい! チャレンジしたい! と思っているなら、もったいない。

 せっかく動き出そうとしたのに踏みとどまるなんて。

「頑張ってきたこれまでの自分」を手放せば、新しい未来が拓く<br />photo by 竹井俊晴

 過去の「しがらみ」を捨てたとしても、過去の「蓄積」がなくなることはありません。自分の目で見て、耳で聞いて、手足を動かして獲得してきた経験はすべて、あなたの血肉となって生き続けています。

 いったんはゼロになった気がするかもしれないけれど、あなたの体にはちゃんと筋肉がついています。

 営業職として1000人のお客さんと向き合ってきた経験は、たとえ1000人分の顧客リストを手放したとしても、その後のあなたのものの見方や話し方、ひいては生き方そのものに反映されていく。

 過去の蓄積はすべて、あなた自身に溶け込んでいるのです。

 だから、大丈夫。手放しても、あなたはゼロにはならないし、何も減らない。

 昨日までの自分を「お疲れさま」とねぎらって、さらりと手放そう。そして、これからはあなたのために生きるんです。