(3)資金の透明性確保

 社会全体にとって最も影響が大きいのはこの問題ではないだろうか?全ての記録が電子データで残るやりとりというのはお金の流れを透明化することに極めて有効であり、犯罪防止にも大いに役立つ。

 なぜなら不透明なやりとり、贈収賄、あるいは脱税といったありとあらゆる金銭に絡む犯罪の多くは現金のやりとりをおこなうことによって可能になっていると言っていいからだ。中にはプライバシーがどうとかいう人もいるだろうが、お金の流れが透明化することで一体誰が困るかを考えると答えは明白だ。あきらかに一般庶民ではなく、一部の資産を隠匿したい人たちにとって困ることになるはずだ。

 ずいぶん昔の話だが、1980年頃にグリーンカードという制度が創設されかかったことがあった。これは当時、預金等で一人300万円までの利息が無税になる「マル優制度」というのがあったのだが、中には仮名を使って一人で何口座もの非課税預金を異なる金融機関で作っている人たちもいた。これを防止するために、貯蓄する人には「グリーンカード」というものを作ってその利用を義務付け、仮名口座を防ごうとしたのである。ところがこれに対して「個人を監視する国民総背番号制につながる」、という反対論がどこからか出てきたことによってつぶされてしまったのだ。

 グリーンカードが導入されて困るのは一体誰だったのか?300万円以下の預金しか持っていない一般庶民にとっては何も不都合なことはない。困るのは一部の政治家や脱税をしている人たちなのである。つまり今も昔もそういう面での抵抗勢力は存在していたということなのだ。

 このようにキャッシュレス化はあらゆる意味でメリットが大きいことなのである。もちろん昨今起こっているような、データ流出に伴って不正に資金が引き出されてしまったという事件はある。だが、これはデータのセキュリティの問題であり、技術の進歩に伴って改善することは十分可能である。そもそも現金自体が「信用」の上に成り立つバーチャルマネーであることを思えば、時代と共により便利なバーチャルマネーに変わっていくのはある意味当然と言って良いだろう。

(経済コラムニスト 大江英樹)