ときめきというモノサシで決める
川原:(米アップル創業者の)故スティーブ・ジョブズは、「本能に従え」という言葉を遺しましたが、その具体的な方法は言っていません。僕はその答えの一つが「片づけ」だと思うんです。
自分の頭と心を使って、「これはときめくか、ときめかないか」と二択を繰り返す。あるデータによると、一人が家の中に所有する持ち物は1万から2万個もあるそうです。そのすべてが、自分で買ったかもらったもの。つまりは、自分の意思で家に持ち込んだものなんです。
こうした過去の意思決定に対して、少なくとも1万回、あらためて「今、これにときめくか」と自問して決断を繰り返す。すると、家がスッキリと片づくだけではなく、自分がこれからどう生きていきたいかが明確になる。結果、人生が激変する人が続出するんです。
佐渡島:自分の中に明らかなモノサシが生まれるということですね。
今までの時代は、「Be someone else you respect」、つまり尊敬する誰かを目指しなさいと言われてきました。そして、自分ではない誰かになるために、弱点をなくして他人の強みを手に入れようとしてきました。
自分の中で反省会をしては、「これが足りなかった」と自分にダメ出しする。
そうではなくて、「今日一番ときめいたのは何だった」と振り返って、「それを次回もやっていこう」と次につなげる。それができれば自分の強みが伸びていく。「自分を好きになれる時」を見つけて大切にできるようになる。自分を好きになるのって、大事ですよね。
川原:自分を好きになれる自分でいる、と言うのかな。でも、それが難しいんですよね。特に同調圧力の強い日本では、どうしても他人の目や評価が気になって、足りないところばかり気にしてしまう。
アメリカに来てよかったのは、そもそも多様性の文化だから他者と比較する感覚がない。みんなが違いすぎて、優劣の比較ができないんです。
だから「自分という存在を、どううまく使って世の中に役立てよう」と考えるし、互いに価値観が異なるという前提でコミュニケーションができる。
チームでプロジェクトが始まるときには、互いに何ができて何ができないのかを確認し合うのが日常なんです。日本も同じようになれば、もっと生きやすい社会になると感じています。