トッププロデューサーが提唱！　素っ裸でさらけ出せば人生は楽しくなる

「あなたはすごい」と言ってくれる
たった一人にめぐり会うこと

佐渡島：社会的な認知が広がってきたLGBTQ然り、「見た目では分からない自分らしさ」まで伸ばせるようになれば、社会はぐんと進化できるんでしょうね。

川原：大事なのは、自分の存在価値を心から認めてくれる誰かに出会うこと。「あなたはすごい」と言ってくれる人が一人でもいれば、「このままの自分でいいかも」と思うことができます。

　でも、その一人に出会えずにくすぶっている才能はごまんといる。

　だから、プロデューサーや編集者のような才能を支援する立場の人が、もっと増えたほうがいいと僕は思っています。僕にとってのプロデューサーは麻理恵さんです。「あなたは私よりずっとすごい」と昔から言い続けてくれました。

佐渡島：素晴らしいですね。僕も似た経験があって、あるクリエイターからこう言われたんです。「あなたが僕をプロデュースしているわけではないですよ、僕があなたをプロデュースしているんです」と。「佐渡島さんは、僕の仕事を面白いと思った時に勝手に関わってくるでしょう？　どちらかが育ててもらおうなんて思わず、お互いにプロデュースし合う関係でいることが、編集者とクリエイター両方の成長につながるでしょう」と。僕の指針になっています。

川原：理想的な関係ですよね。

佐渡島：「あなたはそのままで大丈夫」という言葉の意味について、最近、僕が考えていることを話していいですか。

　自分の中にある芯のようなものはすごく大事だし、世間に合わせて無理に変える必要はない。けれど、その芯をより磨いて自分自身で理解できるようになる努力は必要だし、それを周りにも理解してもらえる工夫も必要です。それを分かってもらうことが、プロデュースではとても重要で、同時に難しさを感じるところなんです。

　僕は今、かなりの数の新人漫画家と付き合いながら、彼ら一人ひとりが持っている芯は否定せず、その磨き方が甘いと言い続けているわけです。でも、そのメッセージがなかなか伝わらないことも多い。「ダメ」という伝え方の難しさを日々感じています。