ただ、マスコミの報道や政府関係者の発言により、Go Toトラベルによって、さもホテル業界が救われたように一般の国民が感じてしまうのは、ホテル業界関係者にとっては非常に憂慮すべき事態だ。特に中堅以下のホテルの場合は、「稼働率」「集客人数」などは、GoToトラベル開始後も前年レベルには到底戻っていない。

 今回のGoToトラベルで救われたのは高級ホテルや高級旅館などであって、中堅以下のホテル、特にビジネスホテルは厳しい状態にある。依然として、休業を余儀なくされているビジネスホテルや廃館となった施設も少なくない。移動制限が解除されビジネス利用客が戻りつつある中で、なぜ中堅以下のビジネスホテルが苦しんでいるかは、Go Toトラベルのスキームに問題があるからだ。

 例え話をしよう。ある駅前の交差点。左に格安衣料店、右にフランスの高級ブランド衣料店があるとする。その両者が同時に35%オフの年末セールを始めたら、読者の皆さんはどちらの店に行くだろうか――。同じ割引率だとすれば、「せっかくだから普段は手の届かない高い商品を買いたい」と思う人が多いのではないだろうか。

 このような心理がビジネスホテル選びにも生じているといえる。GoToトラベルをきっかけに1万円以下の出張経費でホテルを探していたビジネス客がそのワンランク上のシティホテルに移ってしまったのである。かくいう私自身も、GoToトラベル開始以降、名古屋に出張することになった際、いつも宿泊する7000円前後のビジネスホテルではなく、ヒルトン名古屋や名古屋東急ホテルのプランを検索した。

 このようにGoToトラベルによってホテル選びに起こった変化により、さらに稼働率を落とした中堅以下のビジネスホテルも出てしまっている。この現象は旅館などでも同じで、GoToトラベル実施期間においては、名のある高級旅館は1月末まで満室の状態にあり、高額商品から飛ぶように売れている一方、1万円以下の価格帯の旅館は苦戦しているところも少なくない。

GoToトラベルで
市場に起こった2つの変化

 一方、高級ホテルや高級旅館のように、お客様がある程度戻った施設でも直面しなければならない問題、それも今後のビジネスに大きく影響するかもしれない問題がある。

 それはマーケットの「変質」と「偏向」だ。確かに、今回のキャンペーンは、お客様にとって「一度は泊まってみたかった施設」に泊まるきっかけになった。施設側にとってもなかなかマーケットを拡大させることができなかったこれまでの状況を、ある程度は打開できたといえる。特にホテル業界のマーケティング担当者が長きにわたり心を砕いてきた「顧客の次の世代」、言い換えれば、より若い世代のお客様をかなり取り込むことができた。