「なぜ、日本ではユニコーン企業がなかなか出ないのか?」――。
この疑問への1つの回答となるのが田所雅之氏の最新刊『起業大全』(7/30発売、ダイヤモンド社)だ。ユニコーンとは、単に時価総額が高い未上場スタートアップではなく、「産業を生み出し、明日の世界を想像する担い手」となる企業のことだ。スタートアップが成功してユニコーンになるためには、経営陣が全ての鍵を握っている。事業をさらに大きくするためには、「起業家」から「事業家」へと、自らを進化させる必要がある、というのが田所氏が本の中に込めたメッセージだ。本連載では、「起業家」から「事業家」へとレベルアップするために必要な視座や能力、スキルなどについて解説していく。
現状のバリューチェーンの可視化と
採るべき人材のペルソナ構築
採るべき人物像をより明確にするプロセスを提示したい。下の図表を見てほしい。
まずは、前提条件として、自社の事業ドメインや特徴に合った人事戦略の方針を立てる。それができあがったら、現在のバリューチェーンを図のように書き出してみる。その中で、どこが成長に向けて制約(ボトルネック)になっているかを洗い出すのも有効だ。そこをベースに、制約が解かれた「あるべきバリューチェーン」を書き出してみて、そのギャップを埋める人材を書き出すのだ。
これは「資金使途の明確化」にもつながる。実務的な話をすると資金調達の「7-8割」は人材補強に使用される(残りは広告費や、外注開発費などだ)。バリューチェーンレベルで資金用途を明らかにすると、投資家に対して、きちんと「我々は資金を生き金にする」というメッセージと戦略が伝わる。
結局、まだ上場を果たしていない、もしくは利益が出ていないスタートアップを判断する要因の一つとして「描いている戦略の解像度の高さ」になるからだ。
バリューチェーンのギャップや自社に欠けている人材が明確になったところで、手触り感のあるリアルな「欲しい人材像」のペルソナを設定していき、解像度を上げていく。
ペルソナがあることで採用の際に絞り込みが明確になり、メンバー同士のイメージの齟齬を解消でき、採用の意思決定の質とスピードを高めることができる。