「なぜ、日本ではユニコーン企業がなかなか出ないのか?」――。
この疑問への1つの回答となるのが田所雅之氏の『起業大全』(ダイヤモンド社)だ。ユニコーンとは、単に時価総額が高い未上場スタートアップではなく、「産業を生み出し、明日の世界を想像する担い手」となる企業のことだ。スタートアップが成功してユニコーンになるためには、経営陣が全ての鍵を握っている。事業をさらに大きくするためには、「起業家」から「事業家」へと、自らを進化させる必要がある、というのが田所氏が本の中に込めたメッセージだ。本連載では、「起業家」から「事業家」へとレベルアップするために必要な視座や能力、スキルなどについて解説していく。
キャンディデイト・エクスペリエンスを
どう高めるか
人材採用の際に、ぜひ覚えておきたいキーワードがある。それは、キャンディデイト・エクスペリエンス(Candidate Experience)という言葉だ。採用候補者の全体経験をどうやって高めていくか、が重要な論点になる。その論点を明確にするために、下図表のようにキャンディデイト・エクスペリエンスを書き出すのが有効だ。
当然、最初から全体の採用プロセスを完璧なものにすることはできない。採用のPDCAを回していく中で、どこがボトルネックになるかを発見して、徐々に強化していけるかが重要になる。
自社チャネルを充実させる
まずは、以下、採用ファネルの図表の左上にある自社チャネルについて解説したい。
マーケティング同様に、オウンドチャネルとは、コントロールできる採用チャネルになる。採用力を高めたいなら、まずはオウンドチャネルを充実させるべきだ。なぜなら、初期のスタートアップは、資金を多くかけることができない。
その一方で、経営陣やメンバーが、スタートアップならではの魅力を求職者(潜在的求職者)にダイレクトに伝えることができるからだ。