具体的な例を挙げて考えてみましょう。中国人のクライアントとの会食をセッティングする際に、とある部下が以下の2つの仮説を立てたとします。

「中国人だから、中華料理がいいだろう」
「中国人だから、普段食べ慣れているであろう中華はやめて、和食がいいだろう」

 この2つのロジックは、どちらも矛盾がなく、どちらを選択してもクライアントを満足させられる可能性があります。

 しかし、上司が少しも検証せずに「中国人なんだから中華料理にすればいいじゃないか」と、部下に押し付けてしまうと「共感ハラスメント」となってしまいます。

「会食の場所決め」はあくまで一例です。しかし、無意識であろうとなかろうと、上司が自分の主張を押しつけてしまうことで、部下は自分の仮説を検証する余地がないまま物事を進めることになります。部下の胸には、「自分の仮説も合っているのでは…?」という釈然としない気持ちと、ロジックを押しつけてくる上司へのストレスが残ってしまいます。

 こうした「釈然としない」出来事が少しずつ積み重なっていくことで、部下は成長を阻害され、少しずつストレスを溜めていくのです。そして最終的には、「あの上司は自分のやり方を押しつけてくる」というロジハラにつながっていきます。

嫌味な正論を吐いてしまう前に
やっておくべき論理的思考とは?

 では、無意識に行われるロジハラを避けるには、どうすればいいのか。私は、論理思考(クリティカル・シンキング)の原点に立ち返ることで、「嫌われない正論」の使い方を身に付けることができると考えています。

 論理思考は、文字通り「論理的に」物事を整理する考え方です。代表的なツールとして、ピラミッド・ストラクチャーがあります。自分の考えたことを三角形に整理し、思考の妥当性や完成度を視覚的にチェックできるものです。具体的には、自分が伝えたい結論や主張を頂上に置き、下段にその根拠を配置していく構造となります。