相手に合った「対話」を通じて
部下の前提を理解する

 とはいえ、いきなり部下の価値観や思考のクセを知るのは至難の業です。20~30代のビジネスパーソンのなかには、飲み会や喫煙所での会話などの昭和的なコミュニケーションが苦手な人も多く、なかなか本音を聞き出す機会は少ないでしょう。

 そこで私は、部下との「対話」の時間も、仕事の一つとして意図的に設けるようにしています。コロナ禍であれば、ZOOM会議のあと、2人でミーティングルームに残って雑談をしたり、真剣な悩みを抱えているなら時には深夜に長電話をしてみたり。アプローチは部下によって違いますが、本音を引き出そうと身構えるのではなく、あくまで雑談をするという点は共通しています。

 一番いけないのは、「今時の若者は本音を言わない」などと一概に断じてしまい、業務以外のコミュニケーションをしないこと。上司に本音が言えてうれしい部下は多いですし、コミュニケーションの全てが嫌われているわけではないのです。

 一見奇妙に思えるような彼らの意思決定にも何か理由があるのかもしれません。部下の「前提」を理解できれば、そうした部下の考え方もより深く見えてくるようになります。また、対話を通じて部下との信頼関係を深めることができれば、仮に自分が「ロジハラ」をしてしまったとしても、「その意見は私の価値観とは違いますが、まずは先輩の言うようにやってみます」と優しく間違いを教えてくれます。部下の存在が、自身を成長させてくれることにもつながるのです。

 対話を通じて部下の前提を知り、適切なタイミングで「正論」を伝えれば、決してハラスメントなどと言われることはありません。「ロジハラをしていたかも……」と感じたあなたは、今日からぜひ、部下を知ることを意識してみてください。

(グロービス講師 朱子青、取材・構成/丸山彰良)