トランプ支持者御用達SNSも排除
一企業のポリシーで決めていいのか

 そうした基本的人権に関わるレベルの判断は、本来は司法、百歩譲っても国会か行政機関が行うべきであり、一企業のカンパニーポリシーで対応するのを許してはいけないと思います。

 ちなみに、日本ではあまり報道されていませんが、トランプ大統領のアカウントを永久停止した後、ツイッター社は、トランプ支持で陰謀論を展開する右翼勢力であるQAnon関連のコンテンツを投稿する7万以上のアカウントも永久停止しました。

 また、トランプ支持者や陰謀論者、保守派、右翼がメインユーザーであるParlerというSNSに対しては、連邦議会議事堂での暴動の後に、AppleとGoogleがアプリストアからそのモバイルアプリを削除し、またAmazon Web Servicesがホスティングサービスを停止しました。

 確かに連邦議会議事堂襲撃というのは、許されない暴挙です。しかし、ネット上の寡占状況から、有名プラットフォームから締め出された人たちはネット上で影響力を持てないことを考えると、これらの措置はトランプ支持者や極右の人たちにとっては言論上の死刑宣告に等しいのではないかと思います。

 それを民間企業ができるということ自体が非常におぞましいのではないでしょうか。疑り深い見方をすれば、シリコンバレーの企業はほとんどが民主党支持なので、トランプ大統領の退任と連邦議会議事堂襲撃という暴挙を奇貨に、ネット上から極右を一掃しようとしているようにも見えてしまいます。これは、ネットの自由とは正反対の、ネットの大きな偏りといえると思います。

 これらの事実から分かるのは、良識ある人たちが政治や政策に関する真実を見つけるのが、すごく大変になったということです。そうした中で、政治や政策に関する真実を探すにはどうすればよいのか、私にはまだ明確な回答はありません。強いて言えば、マスメディアやネットの独特の偏りを正確に理解した上で、そのバイアスに留意しつつ、多くの情報に接して自分なりに判断するしかないように思えます。

 ただでさえコロナで世界中が大騒ぎで、政治や政策の状況を正しく理解する必要性が大きいことを考えると、マスメディアとネットの双方の偏りに対する問題意識を持ち続ける必要があるのではないでしょうか。

(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授 岸 博幸)