新型コロナの影響が「特にない」ことの背景は何か?
新型コロナウイルス感染症拡大の影響はどうか――これは、「障がい者雇用への、新型コロナウイルスへの対応や影響を教えてください。(複数回答可)」の設問に対し、「特に影響ない」と答えた企業が73%という高い数字になった。
今回のアンケート調査においては、この回答結果が「いちばん意外だった」と手塚氏は答える。
「障がい者雇用については、毎年定期的に調査していますが、今回2020年の調査では、やはり、コロナウイルスによる雇用への影響に注目していました。業績が下がり、求人をやめる企業が多いなかで、障がい者の[採用の延期・中止]は9%にとどまり、73%が[影響は特にない]と回答したことは意外でした」
もちろん、回答社の事業規模や従業員数など、また、「影響」という言葉の捉えた方次第で数字は変わってくるだろう。しかし、手塚氏のコメントにあるように、 [採用の延期・中止]や[採用計画の見直しを行なった] が低い数字だったことは注目に値する。
2020年3月からの半年間で、前年同時期を大きく上回る数の障がい者が解雇されたという報道もある一方、厚生労働省の労働政策審議会(障害者雇用分科会)における資料では、「一般労働者と比較すると、障害者の就職件数や就職率の減少幅は、小規模に収まっている」*5 という、ハローワーク業務統計での見解を明記しており、今回のアンケート結果はその証左になるだろう。
*5 厚生労働省「第97回労働政策審議会障害者雇用分科会資料」より(「障害者」表記は資料原文ママ)
「[特に影響がない]が73%という数字になった理由のひとつは、すでに障がい者を雇用している企業とハローワークの連携が強いからではないかと考えます。調査の詳細では、障がい者雇用をしている企業の75%がハローワーク経由での採用と回答しています。地場に密着したハローワークでは、障がい者の採用から定着までの企業支援や、ジョブサポーターなどの配置も行い、また、企業も、法定雇用率達成のために採用をやめなかったことが、コロナ禍においても、障がい者雇用が推進されている理由でしょう」(手塚氏)
厚生労働省の公表数字*6 からも、ハローワークを通じた「障害者の就職件数」が増加傾向にあることが分かる。企業の障がい者雇用で大切なことは、ハローワークをはじめとする就労支援機関との強いつながりであることは間違いない。
*6 厚生労働省「令和元年度 障害者の職業紹介状況等」より