業績不振のカシオ、株主総会で高野新社長の評価はどうなる?機関投資家の賛否予測を公開Photo:kyodonews

業績不振に加え、時計事業に代わる次の収益源が見いだせないカシオ計算機。6月27日の株主総会では、新社長に就任する予定の高野晋氏や、創業家出身の樫尾和宏会長ら取締役が株主からの“審判”に臨む。ROEは低下傾向にあり、株価も低迷する中、助言会社や主要機関投資家はどのような判断を下すのか。特集『株主総会2025』の本稿では、カシオの全取締役選任議案に対する主要機関投資家の賛否の行方を予測し、その結果を公開する。(ダイヤモンド編集部 永吉泰貴)

業績不振が続くカシオ
ROEは4%割れに

 今年4月、時計大手のカシオ計算機が経営トップの交代を正式に発表した。増田裕一社長は顧問に退き、後任には取締役常務執行役員CFO(最高財務責任者)の高野晋氏が就く。代表取締役会長であり、創業家出身の樫尾和宏氏は、今後は代表権のない取締役会長となる。

 これらの人事は、6月27日に開催される株主総会で正式に決議される予定だ。

 しかし、新体制は船出から厳しい現実が待ち受ける。主力の時計事業は低迷が続き、とりわけ中国市場での販売不振が深刻だ。加えて、時計に代わる新たな収益源も見つからず、事業構造の停滞感が拭えない。

 業績悪化の影響は、株主が重視する財務指標にも如実に表れている。下表の通り、カシオのROE(自己資本利益率)は年々低下傾向にあり、改善の兆しは見えない。

 近年、機関投資家の間では、ROEが8%を下回る企業に対し、経営トップへの反対圧力が強まっている。カシオもその対象となり得る以上、高野新体制は株主の支持を失うリスクを抱える。

 このような状況を踏まえ、ダイヤモンド編集部はレクタスパートナーズが提供する議決権行使予測ツール「AGM(定時株主総会)シミュレーター」を用いて、議決権行使助言会社および主要機関投資家11社の議決権行使基準に基づくシミュレーションを実施。2025年のカシオの株主総会における全取締役選任議案の賛否を予測した。

 賛否の基準は、ROE基準、政策保有基準などの比較的知名度の高いものに限らず、公開されている基準をすべて含む。

 もちろん、実際の投票では個別事情が加味されるため、シミュレーション通りになるとは限らない。だが、株主がどう判断するのか、その傾向を先取りするには十分だ。

 次ページでは、カシオの全取締役について、助言会社と主要機関投資家11社が誰に“ノー”を突き付けるのかを明らかにする。さらに、ある財務指標が、26年以降の再任リスクを一気に引き寄せる火種となり得る実態に焦点を当てる。