Q5. 自分自身では良いアイデアだと思うのだが、役員層から「斬新すぎる」と言われる。定量的に可能性を示したいのだが

「斬新すぎる」というコメントは、「箸にも棒にもひっかからない」ことをオブラートに包んで伝える際に使われることもあるかと思うが、ここではその可能性を横に置き、「かつてない発想で、不確実な要素も多いが、検討の余地はある」といったポジティブな意味合いとして考えたい。

 まず、新規性の高い市場で事業を検討する際は、コア事業に近いものと比べて、定量的な可能性を示すことはそこまで重要ではないかもしれない。というのも、事業計画などの数字はそもそも仮定に過ぎず、市場そのものの不確実性が高いのであればなおさらだからだ。そのような場合、計画上の数字を大きく見せることよりも、その数字を構成する要素を分解し、各要素の実現性をいかに高めていくかの検討に力を注ぐべきだろう。

 また、斬新に見えるアイデアは「Why now?(なぜ今この事業をやるべきなのか?)」を明確にすることが活路につながる可能性がある。定額制の音楽サービスを例に挙げると、かつて2004年に外資の音楽配信サービスが日本市場に参入した時は、一部の熱狂的なユーザーこそ獲得できたものの、多くの消費者にとっては「斬新すぎる」と受け取られ、鳴かず飛ばずであった。しかし、現在は音楽の楽しみ方として主流になっている。これは、誰もがスマートフォンを持ち歩き、高速な通信環境があり、レーベル各社が楽曲を提供する商慣習が定着しているといった条件が揃っているからだ。時代の変化をとらえ、今だからこそ受け入れられると明確に示すことができれば、斬新に見えるアイデアでも活路が見出せる可能性は高い。

 定量的な数字はもちろん大切だが、そもそも事業アイデアそのものの提供価値を、担当者や上司、そして会社が信じることができるかが重要だ。価値を信じる、などと聞くと青臭さを感じるかもしれないが、これはベンチャー企業などに限った話ではなく、大企業であっても、投資家に対する説得において欠かせない姿勢である。

 以上、今回はDXや新規事業をとりまく環境変化、戦う土俵の選び方、上層部の説得のポイントに関する質問にお答えした。変革を推進する皆さんにとって、少しでも参考になれば幸いである。

 次回は、サービスの開発から上市に至るまでの進め方、組織や企業カルチャーの醸成に関する質問にお答えしたい。

(次回に続く)