Q4. 新規事業の実務担当者として、役員層を説得し、予算を確保するコツは

 BCG Digital Ventures(BCGDV)では、数百の新規事業アイデアをふるいにかけるために、コーポレートパートナー(クライアント企業)およびBCG・BCGDVのトップ層で構成される「投資委員会」が開催される。ここでは、10以上の審査項目をもとに各事業について実行か中止かを判断すべく議論を重ねる。当記事でその項目すべてを示すことはできないが、特に重視している3点を紹介したい。

 1点目は、自社の戦略との整合性だ。大企業において企画を通すには、その企業の全社方針を十分に理解したうえで、新規事業がその重要な一端を担うことができるということを定性的・定量的の両面で示すことが重要だ。新規事業の担当者であれば、少なくとも中期経営計画や、株主との約束をじっくり読むべきだ。そのうえで、なぜ他でもない自社がやるのか、自社のどのようなアセットを活用してアンフェア・アドバンテージ(他社には模倣されにくい競争優位性)を構築するかを語ることができれば説得力が増す。

 2点目は、その新規事業が解決しようとしている顧客ニーズの強さだ。顧客の生々しい声を集め、本当に困っている人がいるということ、解決を待ち望んでいる人がいるということを、いかに手触り感をもって示せるかが重要だといえる。そういったターゲットユーザーが何人存在するのか、といった規模の議論も大事だが、仮に市場規模がそこまで大きくなくとも、強いニーズを持つ層からサービスが熱狂的に支持されているなど、顧客市場を取り切れる(独占できる)くらいの可能性が示せればより力強い。

 3点目は、推進体制、すなわちどのようなスキル・パッションを持つ人材が新規事業を進めていくかだ。大企業ではこれがもっとも難しい。なぜなら大企業では人事異動やジョブ・ローテーションが頻発し、起案者自身ですら長く関与できるかは不透明だからだ。BCGDVは、新規事業をともに推進するコーポレートパートナーに対して、企画から開発、ローンチ後の事業成長に至るまでできる限りワンチームでコミットできるよう、人事制度上の特例的な対応も含めて、十分配慮いただくようお願いしている。新規事業の起案者と承認者の双方が、その事業が軌道に乗るまで(場合によっては5年・10年の単位で)、あるいは「芽がない」とはっきり分かるまでコミットし続ける気骨、理解、あるいは覚悟が必要だ。

 加えて、大企業の中で味方を増やしていくには、相手の立場や思考にあわせた「伝える力」も重要だろう。役員層と一言でいっても、それぞれに特徴があるものだ。義理人情に弱い、数字が好き、ご自身の出世や手柄を気にする、といったさまざまなタイプがおられる。ちなみに、どの役員も非常に多忙であるという点は共通しているため、たとえばモックアップ(試作品)のような直観的に理解できるプロダクトを提示することは非常に有効だ。伝える力を磨き、社内の有力者を味方につけ、上位層に何度でも「これは重要だ」とメッセージを伝えることが不可欠だ。