なお、最近ではデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進に伴って、エンジニア人材を数多く採用する企業が増え、非エンジニアの上司がエンジニアのマネジメントをする場面も増えています。

 専門職をマネジメントする際に大事なのは、「目標を握る」こと。私自身もエンジニアチームのマネジメントに携わっていますが、技術の細かいところは私には理解できませんし、そこを突っ込んでいってもこじれる結果にしかなりません。しかし技術がわからないからといってすべてを丸投げするのは論外です。そもそもの事業の目的とゴールはしっかり共有し、その上で専門性が求められる判断についてはテクノロジー領域のプロとしてエンジニアを尊重して任せていく姿勢を心がけています。

DX時代、曖昧なものを察知する能力を磨く1on1

 グロービスでは約4年前からリモートワークの導入をはじめ、2021年2月時点ではフルリモートも導入しています。リモートと対面のコミュニケーションでは、得られる情報の量が大きく異なることを痛感しています。業務でテキスト化できることはオンラインでもオフラインでも変わりませんが、心の状況はやはりリモートでは把握しにくいものです。

 これまでの1on1でも純粋に仕事の話しかしてこなかった、という方は、少し仕事から逸れた情報も取得するようにシフトしていくと良いでしょう。その際は部下から聞き出そうというのではなく、「最近こういうことがあったんだよね、ハハハ」と自分自身のプライベートの話を軽くしてみる。そういった対話の中から、部下がどのような感情をもっているのかを把握することもできると思います。

 ものごとを数値化、言語化、構造化できる力、そして感情など数字にできない曖昧なものを察知する能力。この両極端な2つの能力が、今後ますますDXが進む中、マネジメント層には求められるようになります。1on1は後者の力を磨く絶好の機会です。ぜひこの機会を活用して、上司であるあなた自身のスキルも向上させていきましょう。

(グロービス講師 鳥潟幸志、構成/伊藤宏子)