私がリーダーを務める部門では2年ほど前から1on1を導入しましたが、その際、私が感じたのは、従来のコントロール型のマネジメントと比べると、かなり「我慢が必要」な手法だということです。つい部下に対して上司は指示を出そうと考えてしまいがちですが、1on1は上司が答えを示すのが目的ではありません。上司が根気よく問いを立てることで、部下が自分で考える道筋をつけていくことが目的です。明確に指示を出して部下を引っ張っていくような上司のありかたとは違う、「問いを立てて、待つ」力が求められるといえるでしょう。

 1on1が適切に機能していれば、部下は成長を実感することができ、キャリア目標についても前向きに取り組んでいくことができます。上司の立場から見れば、結果的には部下へのマイクロマネジメントが不要になり、別のやるべき仕事に集中して取り組むことができます。さらに組織全体にとっても、生産性が向上し、組織の戦略方針の浸透が進むという効果があります。

1on1を成功させる上司の心構えとは?

 最後に、これから1on1を導入しようと考えている方、またこれまでの1on1のやり方でいいのか見直したい方に、マインド面、スキル面、オペレーション面での1on1のコツをお伝えしたいと思います。

 まずマインド面では、「1on1は部下のための時間」という目的をしっかり認識すること。次にスキル面では、問いを立てることで部下に気づきを与えるスキルを身につけることです。上司はすぐに答えを与えず、部下が問いに答えている中で自分の考えが整理されていく感覚を育てていくことが大切です。オペレーション面では、「2週間に1回、30分」など定期的に時間を設定するようにします。慣れないうちは、テンプレートを準備して臨んでもよいでしょう。

<テンプレート例>
・前回の面談の振り返り
・今日、質問や相談したいテーマ
 ―今のミッション
 ―仕事で得られた成果、残念だったこと
 ―モヤモヤしていること
 ―これからやりたいこと
・面談で見つかった決定事項(2人の間での決定事項)
・今日の面談の感想