Aさんが友人にこの話をしたところ、皆一様に2億円という高額な相続税を支払えたことに驚きを隠さなかったが、その中の一人が、こんなことをポツリとつぶいた。

「昨年、うちの叔母も1000平方メートル以上の土地を相続したけど、そんなに税金がかかったとは聞かなかったけどな……」

「えっ?」と、Aさんは思った。

 Aさんが相続税申告を依頼したのは、顧問契約を締結している税理士である。長年、事業の記帳代行や所得税申告などを任せてきて、仕事ぶりも堅実で、信頼のおける人物である。その顧問税理士がいい加減な相続税計算をしたり、財産評価に間違いを犯したりするとは考えられなかったのである。

「もう少し詳しく話を聞かせてくれないか」と、Aさんは友人に詰め寄った。

 聞けば、友人の叔母が相続した土地は、自分が相続した土地とさほど遠くない場所にある。しかし、支払った相続税の額を聞くと、5000万円以上の差がある。もちろん、土地以外の相続を含めての課税額であるが。

 なぜ、こんな違いが起きてしまったのだろう。当然のことながら、Aさんの顧問税理士が故意にミスした訳ではない。ただ、残念ながらその顧問税理士は専門分野が異なったために、土地評価の知識が不足していたのである。税理士も医者と同じで、専門分野が異なる。内科医が外科手術できないのと同じなのだ。

そもそも相続税専門の税理士とは
同じ税理士でもどこが違う?

 医師も、税理士も、国家資格である。医師が基礎科目や必修科目を研修し、その後、専門診療科を選択するように、税理士にも必須科目と選択必修科目がある。

 案外、このことは一般に知られていない。

 必須科目は「簿記論」と「財務諸表論」、選択必修科目は「所得税法」「法人税法」「相続税法」「消費税法または酒税法」「国税徴収法」「住民税または事業税」「固定資産税」のうち3科目に合格しなければならない。

 以下のグラフは、国税庁サイトの『令和2年度(第70回)税理士試験結果』科目別の受験者数・合格者数・合格率をもとに作成したものである。

 相続税法は受験者数2499人、うち合格者数264人で、合格率は10.6%と選択必修科目中、最も低い。つまり、相続税法について学び、試験に合格している税理士の数も少ないということだ。