ラジオの広告収入が苦境にさらされる中、ラジオ局も新しい動きを見せている。ラジオ局ならではの質の高い番組をあらゆるプラットフォームで配信する局がある一方で、独自のプラットフォームを育てようとしている局も。また、広告分野ではradikoでターゲットを絞った音声広告の配信がスタートしている。特集『急拡大!音声ビジネス』(全5回)の#4では、そんなラジオ局の戦略に迫る。(ダイヤモンド編集部 塙 花梨)
コロナ禍でユーザー急増!
Clubhouse流行後も落ちないラジオ需要
Clubhouseが流行したのは、コロナ禍の影響が大きいといわれているが、ラジオ局も同様に、コロナの追い風を十分に受けている。
地上波ラジオをインターネットで聴くことができ、国内随一のユーザー数を誇るradikoは、緊急事態宣言下にあった昨年3月以降、1日に訪れるユーザー数が30万人も増加し、170万人となった。なお、この人数はいまだに落ちていない。
radikoは2010年に、若者のラジオ離れや聴取率の減少、民放ラジオ局の広告収入半減などの問題をどうにか打開しようと始まったサービスだ。
放送から1週間以内であれば時間を問わず番組を楽しめる「タイムフリー」機能と、他地域の番組も聴くことができる「エリアフリー」機能(有料会員限定)により、ラジオがいつでもどこでも楽しめるようになった。結果として、19年以降特に10~20代の若年層のユーザーが増えたのだ。
さらに18年夏には、地上波ラジオで実施している垂れ流すだけの音声広告ではなく、ターゲットを絞って打てるデジタル音声広告を開始した。地上波ラジオの広告とradikoの広告を出し分け、radikoでは番組宣伝の局報として使われていた枠を一部、ターゲティングしたデジタル音声広告に差し替えているのだ。
「(デジタル音声広告は)ラジオ全体の広告収入と比べるとまだわずかだが、すでに昨年の200%超。地上波ラジオの広告収入は苦しくなる一方なので、業界の再価値化に一役買うと思う」とradiko取締役の坂谷温氏は語る。
いわば、地上波ラジオ局のネットでの逆襲が始まっていたわけだが、そこにClubhouseが登場。ラジオ局関係者は、Clubhouseをどう捉えているのだろうか。実際には、多くのラジオ局が「焦っておらず、むしろ追い風だ」とポジティブな反応を見せている。
なぜなら、radikoの拡充にとどまらず、ほとんどのラジオ局が収益増のために独自に急進的な改革を進めているからだ。そこには、「自分たちの強みさえ発揮できれば、従来のプラットフォームには縛られない」という強い思いが透けて見えるほど。