一時期のブームはないにせよ、日本人の血液型性格診断(血液型占い)好きはよく知られている。信じる、信じないはともかく、皆それなりに一家言あり「とりあえずの話題」としての座持ちのよさは「とりあえず、ビール」に匹敵するほど。
ところでつい先月、血液型に関するあまり笑えないデータが米国心臓協会(AHA)の機関誌(オンライン版)に掲載された。延べ9万人近くの医療従事者を20年以上追跡した二つの大規模疫学研究を総合的に検討した結果、血液型がO型の人は、心筋梗塞や狭心症などの冠動脈疾患に最もかかりにくいことが判明したのである。
一方の非O型──つまり、A型、B型、AB型のうち、最も冠動脈疾患リスクが高いのはAB型。家族歴や生活習慣などの条件をそろえた上で比較すると、O型より23%もリスクが高いという。次いでB型が11%増、A型は5%増だった。
それぞれの違いを見ると、A型には悪玉コレステロール値が高くなる傾向があり、AB型には血管病変につながる炎症傾向が認められた。どちらも血管を詰まらせ、血流が滞る状態を来しやすい。どうやら非O型の人は、おのおの特有の「血液ドロドロ因子」を持っているらしい。逆に言うとA型の人は、例えば悪玉コレステロール値に注目して、冠動脈疾患の予防や治療を心がけるといいのかもしれない。
研究者は「血液型は、コレステロール値や血圧値に匹敵する重要項目」であり、「発症リスクが高い血液型の人は、より健康的な生活習慣を目指すべき」としている。
ゲノム解析の研究からは血液型をO型に決定する酵素が、同時に心筋梗塞を予防する働きに関連することがわかっている。つまり、O型は先天的に「血液サラサラ体質」と言えそうだ。ちなみに脳卒中の発症リスクを比べると、やはりO型が最も低く、AB型の女性がO型より32%、男性は28%リスクが高くなる。
ただ、これらの報告は白人種が対象。単純に日本人に当てはめるのは躊躇(ためら)われる。どなたか日本人の「血液型疾患予防学」研究に着手していただきたいものである。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)