「見た目の美しさを高めようとして化粧品を買うなんてのは、日本でも変わらないだろ」という声が聞こえてきそうだが、そういう類の話ではなく、化粧品の見た目、つまり「パッケージ」が消費に大きな影響を与えているのだ。
「Z世代は化粧品を選ぶ際に、品質や価格だけではなく、パッケージを重視しています。実際アリババのビッグデータでも、化粧品の中でパッケージデザインを重視している消費者が80%以上もいます。ただ、ここで注意が必要なのは、そのデザインが必ずしも個性的でハイセンスであればいいというわけではなく、およそ7割の消費者がクラシックなデザインを好んでいるという点です」
言われてみれば、冒頭のSNS調査でランキング圏外から12位へと躍進した韓国高級化粧品ブランド「The History of 后(Whoo)」を見ると、宮中秘伝の漢方薬配合というコンセプト通り、日本ブランドではあまりお目にかからない凝ったパッケージデザインで、ボトルなども「宮中」を思わせる“クラシック”な印象を受ける。
ちなみに、日本で定期的に化粧品に関するネット調査をしているマイボイスコムのリリース(20年9月10日)によれば、日本の消費者が化粧品を選定するときに重視するのは、「肌との相性」が59.3%、「使用感・使いごこち」「効能・効果」「価格の適正さ」が4~5割で、「パッケージ」という言葉は出てこない。
問題はブランド力や
マーケティング力ではない
このような「日本人の感覚とかけ離れたZ世代の消費意識」を踏まえた商品の企画開発に力を入れないことには、ブランド力やマーケティングをいくら論じても意味がない、という李さんの指摘は傾聴に値する。
もちろん、「そんなことは言われなくてもしっかりやっている!」という日本企業も多いだろう。しかし、かつて中国人観光客が日本にやってきて、百貨店やドラッグストアで日本の化粧品を「爆買い」している印象があまりにも強いことで、どこかに「日本製」というだけで中国の消費者が無条件に受け入れてくれる、という「奢り」がある部分も否めないのではないか。
と言うと、「そこまでして中国市場に依存しなくてもいい」という意見もあろうが、コロナで中国インバウンドが消滅したことで、百貨店が大ダメージを受けて、多くの日本企業の業績が悪化しているのは紛れもない事実だ。