組織文化を知り、変え、進化させる方法を紹介した新刊『ウィニングカルチャー 勝ちぐせのある人と組織のつくり方』。本書では特典付録として、インテグラル理論や成人発達理論に詳しい知性発達学者の加藤洋平さんと中竹竜二さんの対談を収録しています。対談の前編では、加藤さんが組織文化を変えることの難しさについて解説しました(詳細は「成人発達理論で分かった!組織の文化が簡単に変わらないワケ」)。対談中編では実際に中竹さんが改革をした横浜DeNAベイスターズの事例を軸に、組織変革の流れを、インテグラル理論から解説してもらいました(構成/新田匡央)。

人に「刺さる」言葉を投げかけたいなら発達段階を見極めよう加藤洋平さん
一橋大学商学部経営学科卒業後、デロイト・トーマツにて国際税務コンサルティングに従事。退職後、米国ジョン・エフ・ケネディ大学にて発達心理学とインテグラル理論に関する修士号および発達測定の資格を取得。オランダのフローニンゲン大学にてタレントディベロップメントに関する修士号および実証的教育学に関する修士号を取得。著書に『なぜ部下とうまくいかないのか「自他変革」の発達心理学』『成人発達理論による能力の成長 ダイナミックスキル理論の実践的活用法』監修書に『リーダーシップに出会う瞬間 成人発達理論による自己成長のプロセス』、監訳書に『インテグラル理論 多様で複雑な世界を読み解く新次元の成長モデル』(以上、日本能率協会マネジメントセンター)がある。ウェブサイト「発達理論の学び舎」にて、インテグラル理論や成人発達理論に関する情報を共有している。

中竹竜二さん(以下、中竹):対談前編では、組織文化を知るということは、その組織の発達段階を知るということでもあるというお話をしました(詳細は「成人発達理論で分かった!人も組織も簡単には変われないワケ」)。

『ウィニングカルチャー 勝ちぐせのある人と組織のつくり方』でケーススタディとして取り上げているプロ野球チームの横浜DeNAベイスターズも、当初は自分のことを第一に考えるような利己的な段階にありました。コーチやスタッフはプロフェッショナルとして自分の力で生きていかなければならないので、そう考えるのも当然です。成果を得たいというよりも、ミスをしたくないとか自分のせいで負けたくないという感覚が強く、そういう意味では利己的でありながらも保守的な感じがありました。

加藤洋平さん(以下、加藤):インテグラル理論で言えば、レッド(利己的段階)とアンバー(神話的段階)が混じっている段階ですね。チームの約束事の範囲内にいて、その範囲の中で自分の結果を出すことにフォーカスしている。保守的の意味が興味深いですね。

中竹:一人ひとりがわがままを言うわけではありませんでしたが、かといって、みんなで力を合わせて何かを成し遂げようという感じでもありませんでした。

 当初、ベイスターズのコーチやスタッフは、自分たちのノウハウを出そうとしませんでした。教え合うとか学び合うという発想がなかったんです。本来なら、コーチ陣の間でフィードバックをし合い、選手が成長することにフォーカスすべきなのに、それができないような状況でした。大切なのは、自分のノウハウを守り抜くこと。そんな姿勢だったんです。

加藤:ノウハウを自分の中にため込んでオープンにしないのは、利己的段階の特徴として見られる傾向です。中竹さんが入る前には、保守的かつ利己的段階だったベイスターズが、そこからどのようなプロセスを経て、変わっていったのですか。

中竹:私が最初にしたのはチームビルディングのトレーニングです。「チームで戦いましょう」「選手とスタッフで一つの目標に向かうチームになり、持っているものや思っていることを共有して共創していきましょう」。そんなメッセージを伝え続けました。

 そのときの目標として、「日本一になるために」「優勝するために」という言葉を口に出すように求めました。「最初は恥ずかしくても口に出して言い続けましょう」と。