解析の結果、5年以内の認知症の発症リスクは、睡眠時間が5時間超の人と比べて5時間以下の人で204%、睡眠潜時が30分未満の人と比べて30分超の人で45%増加することが明らかになった。また、1週間のうちで覚醒状態の維持が困難な日数や昼寝の頻度が増えるほど全死亡リスクが高いほか、睡眠の質の低さや睡眠時間の短さも同リスクの上昇と関連することが示された。
Robbins氏は、「短時間の睡眠時間と認知症リスクとの関連を明らかにした研究は、今回のものが初めてではない。しかし、この研究では、さまざまな睡眠の特徴を調べた上で、最も影響を与える因子は短時間の睡眠であることを突き止めた点で他の研究とは異なる」と主張する。
とはいえ、この研究により、睡眠不足と認知症リスク、あるいは全死亡リスク上昇との因果関係が示されたわけではない。また、この研究には関与していない、米ノースウェスタン大学フェインバーグ医学部のSabra Abbott氏は、「場合によっては、睡眠不足は認知症を引き起こす原因というよりも、認知症の初期症状である可能性がある」と述べている。同氏によると、認知症の初期段階では、さまざまな原因で睡眠が障害されるという。その一例として、同氏は視交叉上核(SCN)と呼ばれる、脳の視床下部にある神経核を挙げる。SCNは哺乳類の概日リズムのコントロール部位として、睡眠のタイミングと睡眠ホルモンであるメラトニン生成の調節に関与するが、認知症の初期段階で退化し始めることがあるという。
一方Robbins氏は、睡眠不足が脳にダメージを与える可能性があるとする。その理由として、アルツハイマー病に関連する異常タンパク質を脳が除去するには、十分な睡眠が重要である可能性が動物実験で示唆されていることを挙げる。Abbott氏は、睡眠不足が感受性の高い人の認知症を悪化させる可能性を認めつつも、睡眠不足が脳疾患の原因になるのか、それともその症状の一部であるのかを見極めるのは難しいとしている。
Robbins氏は、健康的な睡眠習慣を維持するために、1)寝室にテレビや電子機器を置かない、2)就寝前に明るいスクリーンを見ない、3)日中は太陽光を浴びて自然な概日リズムを維持する、の3つの実践を勧めている。また、睡眠不足には、睡眠時無呼吸のような根本的な問題があるかもしれないので、慢性的に睡眠不足を感じている場合は、医師の診療を受けるべきだとしている。(HealthDay News 2021年2月17日)
https://consumer.healthday.com/2-16-too-little-sleep-could-raise-your-dementia-risk-2650480672.html
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