ピクサーの傑作を生むフィードバックは、なぜ「あら探し」にならないのか誰もが気兼ねなく意見を言える組織の特徴とは? Photo:PIXTA

視野を広げるきっかけとなる書籍をビジネスパーソン向けに厳選し、ダイジェストにして配信する「SERENDIP(セレンディップ)」。この連載では、経営層・管理層の新たな発想のきっかけになる書籍を、SERENDIP編集部のチーフ・エディターである吉川清史が豊富な読書量と取材経験などからレビューします。

誰もが気兼ねなく意見を言える
「心理的安全性」のある組織とは

『トイ・ストーリー』シリーズをはじめとする数多くの傑作アニメーション映画を製作し、小さな子どもから大人までを楽しませているピクサー・アニメーション・スタジオ(以下、ピクサー)。昨年12月に公開された最新作『ソウルフル・ワールド』は世界中でヒットし、ゴールデン・グローブ賞アニメーション作品賞などを受賞した。今年6月には『あの夏のルカ』の日米同時公開も控える。

 ピクサーは、1986年にスティーブ・ジョブズがルーカスフィルムのコンピュータ・アニメーション部門を買収して誕生した。95年からはディズニーとの共同製作で人気作品を連発している。

 35年間、クオリティーの高い作品を世に送り出し、揺るぎない実績を築き上げてきたピクサーだけに、優秀なクリエーターたちが天才的なひらめきのもと作品の原型を作り上げ、それに磨きをかけて名作が生まれてくると思うのではないだろうか。

 だが、共同創設者のエドウィン・キャットムル氏によると、ピクサーの作品は「どの作品も、最初は箸にも棒にもかからない駄作」なのだという。『トイ・ストーリー』も、製作当初の段階では、おそらく「おもちゃたちの秘密の暮らしを描いた感傷的でつまらない映画」だったということだ。

「箸にも棒にもかからない駄作」が公開時には「傑作」となり、ヒットする。どうやらその制作プロセスで、ピクサー流の「魔法」がかかるらしい。どんな魔法なのだろうか。