さまざまなパートナーと深めていくSDGsの知見

 2020年6月に、佐々木さんは遠野高校*4 で、最初の授業に臨み(50分×2コマ)、その後、9月から11月にかけて、「総合的な探究の時間」のカリキュラムで授業を継続した。目的は、遠野市の社会問題や取り組みから、生徒がSDGsを理解し、自分事にしてもらうこと――具体的には、遠野市のゴミ問題を通して、日本のプラスチック使用が世界第2位であることやプラスチックの使用用途として包装が多いことを伝え、SDGsのゴール12「つくる責任・つかう責任」の理解につなげるというものだった。また、包装容器の製造販売を行う大手企業も授業に参画し、企業側から見たプラスチックのメリット・デメリットを生徒と共有した。

*4 岩手県立遠野高等学校 岩手県遠野市六日町3-17 明治34年5月1日に授業が開始された男子校“岩手県立遠野中学校”をもって始まりとし、明治41年に設置された女子校“遠野町立女子職業補習学校”を統合し、昭和24年4月1日に現在の校名である“岩手県立遠野高等学校”となっている。本校の歴史をたどる際には、前者を“旧中学校”、後者を“旧女学校”と呼称している。(同校ホームページより)

佐々木 カレッジから、遠野高校の「総合的な探究の時間」における「新しい『遠野物語』を創るプロジェクト」の中で、SDGsを通して生徒と向き合うことのお話をいただいたときは、「コロナ禍で生活の移動範囲が限定されていくなか、地方で生活する生徒とSDGsについて学べる機会になる」と思い、「地方だからこそ学べるものがある」と考えました。

 東京圏では単発の授業が多かったため、生徒の理解度を授業後に把握できないこともあったのですが、遠野高校では継続的に関わる機会をいただき、SDGsの課題への私自身の発見もありました。

 最初の授業で、15人のうちの3分の1の生徒が「市外に出てみたい」という考えを持ちながらも、「また(遠野に)戻って、地域に貢献したい」という思いがあることを知り、その意識の高さに驚きました。

SDGsについて、東北の高校生たちが知って、考え、動いたことSDGsについて学ぶ、岩手県遠野市の生徒たち。 佐々木さんは、みんなの意識の高さが印象的だったという

 授業では、地域の課題を見つけた後で、生活の中でもSDGsに継続して取り組むための目標(プロジェクト)をグループごとに考えました。そして、その中のひとつが「こども本の森 遠野*5 」に本を寄贈する計画へと広がったのです。

「自分たちの住む遠野を活性化したい」という生徒の想いが、「子どもの多くいる街はにぎやかで活気がある」という結論を導き、「こども本の森 遠野」が多くの子どもの集まる魅力的なものになれば、市内の新たなにぎわいが創出できるのでは?という推察から、校内での“本集めの呼びかけ”に至りました。寄贈については、地域の団体であるNext Commons Lab遠野*6 さんの存在が大きかったです。

 Next Commons Lab遠野さんにはSDGsの課題提供者として授業にも参画いただきました。さらに、特定非営利活動法人 いわてNPOフォーラム21*7 さんにも県内の取り組みなどを生徒さんに伝えていただきました。カレッジのSDGsパートナーである私だけが行う授業ではなく、市役所の職員さんなど、さまざまな方や団体のご協力(パートナーシップ)で、SDGsに対するみんなの理解が深まっていったのです。

*5 遠野市「こども本の森 遠野」の概要を発表(国立国会図書館 国際子ども図書館ホームページより)
*6 2017年4月設立。「Next Commons Labは、まだ見ぬ社会をつくるために実験と実践を繰り返すソーシャルプロトタイピングチームです」(Next Commons Lab遠野 ホームページより)
*7 特定非営利活動法人 いわてNPOフォーラム21 ビジョン=私たちが目指すもの「岩手県内におけるNPO(民間非営利組織)活動を多面的に支援するとともにNPO相互のネットワーク化を促進し、NPOと行政との連携及びNPOと企業との連携を促進することで、一人ひとりが生きる喜びを実感できる豊かな社会の実現」(ホームページより)