グループワークから広がる理解と新たな気づき

 遠野緑峰高校*8 では「食品ロス」をテーマに、「SDGsを目指した食生活を送ることができる社会人になるために」という目的で、1年生と2・3年生のそれぞれを対象に授業を行った佐々木さん。その授業の様子は地元のテレビ局でも紹介され*9 、同校が発行する「緑峰ニュース2020」では、授業風景の写真とともに大きく取り上げられた。記事には、「(授業では)食品ロスと過剰包装の問題をとりあげ、生徒みんなでアイデアを出し合いました」と書かれている。

*8 岩手県立遠野緑峰高等学校 岩手県遠野市松崎町白岩21-14-1  教育方針「教育目標の達成に努め、本校建学の精神と地域の要望を考慮した専門教育を進めるとともに、生徒一人ひとりの個性を生かし、育てる指導を実践するとともに、特に、次の事項を重点とする」(同校ホームページより)
*9 遠野テレビ 2020年11月3日放送「生ごみから持続可能なまちづくりを考える」

佐々木 遠野緑峰高校との出会いはカレッジに在籍してすぐでした。

 遠野市は、約半世紀にわたり、国内上位のホップ*10 生産量を誇っています。遠野緑峰高校では、地域特産品であるホップに新たな付加価値を創る研究の一環にて“食材として活用するためのレシピ開発”をしているとのことで、私は授業の冒頭で、「皆さんの活動は地域や農業の発展に貢献しています」と、SDGsの側面からお話ししました。生徒たちは、自分たちの取り組みがSDGsに関わりがあることを知って驚いていました。

「食」を真ん中に置いてSDGsを考えると、食品ロスや包装プラスチック、規格外野菜や地域の過疎化といったさまざまな課題が連鎖していきます。「講義&グループワーク」という授業形式において、まず、情報を頭にインプットし、そこから自分の考えをアウトプットする――そうすることで、SDGsを意識した生活が実践できることに気づいてもらいました。

SDGsについて、東北の高校生たちが知って、考え、動いたことSDGsについて知った生徒たちは、地元の課題とSDGsのゴールを結びつけていった
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 グループワークの過程で、自分たちが関心のある「社会問題」や「(SDGsの)ゴール」を明確にしていったのですが、遠野緑峰高校は長年にわたって地域との関わりを大切にしているので、生徒の考えのベースに「地域の特産品との関わりを大切にしていきたい」という想いが強くあることが分かりました。

「SDGsは、地域だけでなく、生活の取り組みの中にもある」とコメントした生徒がいたり、授業を受けられなかった生徒に対し、授業を受けた生徒がSDGsの説明をしている姿を見かけたときはうれしかったですね。

 地域のゴミ問題について市役所の話を聞いたり、身近に取り組めるもののひとつとしてコンポスト(堆肥を作る容器)に目を向けて、100円グッズで作った簡易のコンポストから食品分解について考えるなど、SDGsへの理解を深めていきました。

 私が学校を離れてからも、実際に木製のコンポストを作成した連絡もいただきました。冬場は土が凍ってしまうといったトラブルもあったようですが、春先からの活動に向けて動いているようです。

*10 アサ科の多年草植物であるホップは、ビールの味や香りを醸成する(雌株の毬花の中に含まれる粉末を使用)。岩手県はホップが生産量日本一(令和元年)であり、なかでも、遠野市は国内屈指のホップ産地で、「ホップの里からビールの里へ」を合言葉に新しいまちづくりの取り組みも行われている。(参考:岩手県ホップ[いわてお国自慢]、キリンホールディングス株式会社[ABOUT HOP])