通信環境の整備で大都市と地方の教育格差が減る

 現在、佐々木さんは帰京して、東京をベースに「持続可能な育成プロジェクト」の活動を再開している。SDGsをテーマにした“遠野市の生徒との関わり”を振り返ってみて、「地方」「教育」というキーワードから見えたものは何か?

佐々木 「地方=人口が少ない、小さい自治体」と思いがちですが、「地方」という言葉の持つイメージは漠然としていて幅広いものです。遠野市は人口が約2万6000人、新しい国立競技場の収容人数が約6万人で、遠野市を「大きい」と思うか、「小さい」と思うかは人それぞれですが、今回は「地方」という表現でお話しさせていただきます。

SDGsについて、東北の高校生たちが知って、考え、動いたこと佐々木さんが移住し、学生にSDGsの授業を行った遠野市は岩手県内陸部にある人口2万6000人ほどの自治体だ。美しい自然にあふれている

 大都市圏から離れた、いわゆる「地方」で暮らす人たちは地元での生活をベースにネットからさまざまな情報を得ながら、自分たちの住む土地の「強み」と「弱み」を理解していることに私は気づきました。そして、いま振り返れば、SDGsを考えるうえで、遠野市は街全体が教科書的で、課題に取り組みやすい場所でした。

 生徒への教育に関して言えば、都心でもWi-Fi環境がまだ整っていない学校や、整ったたばかりの学校が多くあります。今後、Edtech(エドテック)*11 が進むうえで、Wi-Fi環境を整備すれば、地方であっても、SDGsをはじめとする新たな学習指導を行うことができるでしょう。遠野高校は先月2月にWi-Fi環境が整いました。

 地方には活用できる資源がたくさんあります。遠野市では、皆さんのたくさんのお力とともに、そうした資源の話とSDGsのゴールをつなげて授業に携わらせていただくことができました。

*11 education+technologyの造語で、インターネットなどのオンラインシステムを活用した教育サービスのこと。(goo辞書[エドテック【EdTech】 の解説]より)