ドン・キホーテがプライベートブランド(PB)「情熱価格」をリニューアル。2月の発表会で運営会社の吉田直樹社長CEOは「情熱価格が、いまひとつ面白みに欠ける普通のPBになってしまったことを、心よりおわび申し上げます」と唐突に反省の弁を述べつつ「PBの常識をどんどん変えていく。ドンキは本気です」と決意を語った。“ダメ出し”の募集や激辛商品など、イオンやセブン&アイ・ホールディングスなど大手企業の戦略との対比で、その“非常識”な手法を明らかにしよう。(流通ジャーナリスト 八神啓太)
規模では大きく劣るドンキ「情熱価格」
「ドンキらしさ」で何を勝負するのか?
ドン・キホーテを展開するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)は、プライベートブランド(PB)である「情熱価格」単独の売り上げを公開していない。
一方で、2011年から20年の6月期までの決算説明資料では、折れ線グラフや棒グラフでおおよその売上高を公開している。グラフのメモリに基づく目算だが、10年6月期でアイテム数約600点・売上高約50億円でスタートした情熱価格は、20年6月期は約3900点・520億円超に成長している。
20年2月期の他の流通大手のPB売上高を見ると、セブン&アイ・ホールディングス(HD)の「セブンプレミアム」は1兆4500億円、流通最大手のイオンが展開するPB「トップバリュ」は8098億円だ。
単純に売上高だけを比較すると、ドン・キホーテは、1ケタも2ケタも規模が小さく、スケールメリットが生かしやすいといわれるPB開発では、大手2社の後塵を拝している。
PPIHの吉田直樹社長CEOは、2030年度に国内売上高2兆円、海外売上高1兆円を目指す新しい中長期経営計画「Passion」に触れ、21年6月末の売上高見込み1兆7000億円から逆算して、毎年、年間1000億円以上の売り上げ増を達成する必要性を強調した。
そして、国内戦略の一つとして「PBを軸に業態価値をさらに高める。そのために、業態イメージをけん引するような、ドンキがほうふつされるようなPBを開発する」と述べている。そこで打ち出されたのが、今回のPB「情熱価格」のリニューアルだった。
一般的にPBは、ナショナルブランド(NB)に比べて価格は安いが品質は劣っていない商品と位置付けられている。そのためPBの開発では、スケールメリットを打ち出すことが一般的だった。