ルネサスエレクトロニクスの主力生産拠点で火災が発生し、自動車向け半導体などを生産するラインが停止した。この復旧までの作業が、半導体業界の“大問題”を改めて浮き上がらせることになっている。 (ダイヤモンド編集部 新井美江子)
「あんな古い設備、復旧できる人は残っているのか。いずれにしても、復旧には手間と時間がかかりそうだ」(経済産業省幹部)
3月19日、半導体大手ルネサスエレクトロニクスの主力生産拠点である那珂工場(茨城県)で火災が発生。一部の生産ラインが停止を余儀なくされている。
火災が起きたのは先端半導体の量産を行う、直径300mmの半導体ウエハーに対応した生産ラインである。生産工程の一部で使うめっき装置に過電流が発生したことで、樹脂などでできた装置の筐体やめっき槽から出火した。
柴田英利・ルネサス社長兼CEOは21日に開いた会見で「1カ月以内で生産再開にこぎ着けたい」と語ったが、目標達成には壁が立ちはだかる。
1階のクリーンルームに広く付いてしまったすすは人海戦術で取り除くとして(すでに、取引先などから約50人の応援を受け入れている)、まず問題になるのは焼損した製造装置11台の調達だ。
今、半導体業界は空前の供給不足にある(詳しくは『EV・電池・半導体 脱炭素の最強カード』特集を参照)。それ故に半導体製造企業の設備増強ニーズが高まっており、製造装置まで手に入りにくくなっているのだ。中には、焼損したうちの4台を使わないことには作れない製品もあるというから、一大事だ。
これには経産省も危機感を抱いており、製造装置メーカーに協力を要請しているくらいである。
装置が調達できたとしても、まだ難題がくすぶる。今回火災が起こったのは、2001年に世界で初めて300mmウエハーの量産に成功した工場だ。当時は最新鋭だったかもしれないが、要するに古い。設備も相当カスタマイズが施されているといわれ、ルネサス周辺には冒頭のような懸念が渦巻いている。
頭を抱えているのは、ルネサスの重要顧客である自動車メーカー各社の面々だ。