日の丸半導体製造装置メーカー、最強TSMCを支える底力の凄みと課題盤石経営の台湾・TSMCを支えているのは、日系をはじめとする半導体装置製造メーカーだ Photo:123RF

米中覇権争いで大幅減収のTSMC
それでも米国にコミットする理由

 米民主党のジョー・バイデン前副大統領が次期大統領に就任することが、事実上決まった。今後の政権移行手続きにおいて注目されているのは、トランプ政権で打ち出された対中貿易政策の行方だ。

 米中ハイテク覇権争いによって、華為技術(ファーウェイ)と傘下の海思半導体(ハイシリコン)は、米国のエンティティ・リスト(禁輸リスト)に記載された。この結果、台湾積体電路製造(TSMC)は、9月中旬以降、ロジックICのウェハー処理を受託できなくなっている。

 ファーウェイはTSMCにとってクアルコムに次ぐ第2位の顧客であり、最先端の5ナノメートルプロセス(売上構成比8%程度)をアップルと分け合う顧客でもある。委託料に加え、台湾工場の稼働率の低下の影響も大きく、TSMCは1000~2000億円程度の減収になるともいわれている。

(注)TSMCラインの空きキャパシティは、ファーウェイの競合企業にとっては、自社量産計画を前倒しし、プロセスを進化させる機会ともなり得る。このためTSMCの減収は、ファーフェイ競合企業による代替でカバーされる可能性もある。

 TSMCは出荷許可を得るために、ライセンスを申請しているといわれてる。最先端ではないプロセスについては、一部申請が認められたとの報道もあるが、許認可が得られたとしても、ライン立ち上げには数ヵ月から半年程度を要するため、TSMCへの影響は避けられない。それでもTSMCは出荷停止を決めた。

 さらにTSMCは、トランプ政権の要請に応じ、国防目的の5ナノメートルプロセス半導体製造工場を建設することも発表した。政権移行の有無にかかわらず、米国をはじめとする西側諸国のビジネスを失わない意思をTSMCは明確にした。