資産運用にはリスクシナリオも考える
巨大災害はインフレとドル高を引き起こす

 老後資産について考えるならば、大災害が起きた場合の対策も必要だ。筆者が重視しているのは、南海トラフ大地震である。もちろん、住宅の耐震化で家という資産を守ることも重要だが、大地震が超インフレをもたらす可能性も考えるべきだ。

 大地震と大津波で東京、名古屋、大阪が壊滅的な被害を受けたとすると、復興資材が決定的に不足するだろう。需要が爆発的に発生する一方で、生産能力が激減することになるからだ。

 復興資材を輸入するとしても、港湾設備が使えるか否かわからない。仮に輸入が可能だとしても、輸入のための外貨買いが殺到して猛烈なドル高になる。ドル高は、そのまま輸入物価を高騰させるので、国内物価が更に上昇することにもなりかねない。

 日本政府は巨額の財政赤字を抱えているので、政府が破産するかもしれないと心配している読者もいるだろう。そうした読者は、ハイパーインフレを心配すべきである。

 日本政府が破産すると誰もが信じた瞬間に何が起きるかを考えてみればよい。日本銀行券は、「政府の子会社である日銀が印刷した紙切れ」にすぎないので、「日銀券が紙くずになる前に実物資産に換えておこう」と人々が考えると、誰もが一斉に預金を引き出して物を買うはずだ。そうなれば、超インフレになるだろう。

 このように、預金はインフレに弱いリスク資産だ。株式や外貨には、値下がりのリスクがあるから持ちたくない、という人は多いが、預金もリスク資産なのであれば、預金とドルや株式を少しずつ持っておくことでリスクを分散すべきだ。

 筆者が資産運用を勧めているのは、もうけるためというよりは、リスク分散のためだ。全財産に占めるドルや株の比率をどうするかは、各人が考えればよいが、全額預金だけはお勧めできないことを明記しておこう。

 本稿は、以上である。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織等々とは関係がない。