年間100回以上、受講者数3万人を教えてきた企業研修や講演の中から、リーダーの悩みをピックアップ。内容によっては、「本当にこんなことが起きているの?」「ウチの会社ではこんなレベルの低いことは起きていないよ」と思うこともあるかもしれません。しかし、これらはすべて、実際に現場のリーダーが抱えている問題なのです。

自分の意識を変えるのでさえ難しいのですから、部下の意識を変えさせるのはもっと難しいもの。そこで、新刊どう伝えればわかってもらえるのか? 部下に届く 言葉がけの正解から、シーン別にNG行動・発言とOK行動・発言を対比させながらどのような言動で接したらいいかを紹介していきます。

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リーダーの不正解:報告はリーダーのためにあると考える
リーダーの正解:報告は部下のためにあると考える

「新商品説明会の資料作成を頼んだ。締め切り前日に提出されたものの、思っていたものとだいぶ違い、徹夜で修正を余儀なくされた」

「役員会で提案する新プロジェクトの提案書を部下に頼んだ。3日前に上がってきたが、内容が稚拙で、自分が修正する羽目になった」

 このような事態が起きてしまい、はじめから自分でやっておけばよかったと苦悩するリーダーたちを見てきました。しかし、「任せる」は部下育成に必要なことです。

 どちらのケースも、期限ぎりぎりではなく、もっと早い段階で確認しておけば、リーダーが苦労することはなかったでしょう。

…>報告は何のためにあるのか?

 全国展開している教育機関の広報部に所属していたリーダーAさんは、期限の定まっていない仕事や、部下にとって初めて取り組む仕事をお願いするときは、期限を設けます。ただ、部下に自主性をできるだけ持たせたいと考え、進捗状況を知らせる中間報告の時期を含めて、すべて部下に任せるようにしていました。

 しかし、期限ぎりぎりになって、部下がドタバタすることが多く、
(×)「もっと早めに報告が欲しい」
と伝えました。

 修正に要する時間などを考えて早めに中間報告に来てほしいのに、ハラハラします。中間報告をおろそかにする部下はいますが、その真意が伝わっていないのでしょう。

 そもそも、リーダーがただ安心するための中間報告はありません。部下からの報告を受けて、必要であれば計画を修正するためのものです。また、「任せっきりにせず一緒にやっていく」、リーダーとしての責任の意思表示でもあるのです。

 このケースでは、部下が「報告は何のためにするのか」をわかっていないことが問題でした。

 報告が遅いために、方向性がずれていることが期限ぎりぎりに判明するようでは、手戻りややり直しの時間が余分にかかってしまいます。冒頭の例のように、徹夜になってしまったり、ひどい場合には期限に遅れてしまったりする可能性が出てきます。

 そこで、中間報告のタイミングを最初に任せるときに決めておくのです。

 一番いい方法は、「ある程度キリのよい時点」、あるいは、「■■日の▲▲時に確認する」など、時期をしっかり決めておくことです。

 この方法で中間報告はされるようになりました。ただ、これだけでは、「報告は何のためにするのか」が部下に理解されていなかったため、イメージと全然違う成果物が上がってくることが多かったのです。

…>手戻りや作業時間の見積りミスを最小限にしたい

 その一方で、リーダーBさんのチームは、中間報告でイメージしていたものとほぼ近い成果物が上がってきました。

 Bさんは、中間報告の前に、もう一つの期限を設定していたのです。

 部下に仕事を任せるときに、
(○)「次回の報告時にやり直しして時間を取られるのはお互いのためにならない。解釈にズレがないか、取りかかる前に確認しようか。1時間後に、成果物のイメージがつくラフ案とざっくりしたスケジュールを作って持ってきて」
とお願いしていたのです。

 指示した直後、完成イメージと全工程のスケジュール、それらを改めて確認するための中間報告の時期を決めていたのです。

 1時間後に確認することで、手戻りや作業時間の見積もりミスなどを最小限にできます。また、間違って解釈されている部分がないかを確認したり、どの工程が難しそうか、時間がかかりやすいかなども明確にしたり、対策を練ったりすることもできます。

 リーダーAさんのチームでは、中間報告がダメ出しされるネガティブなイベントになっていたので、ある程度できるまで部下が報告に来ませんでした。結果、リーダーの意図とだいぶズレているものができあがり、直すのに時間をとられるなどの無駄も多く生じました。

 リーダーBさんのチームは、部下の考えた方向性とリーダーの考えている方向性の違いに最初に気づけたので、その時点ですり合わせをしておくことで、中間報告でダメ出しすることはなく、無駄が生じませんでした。

 中間報告という言葉が与える印象にもよるかもしれませんが、部下の考えを後押しする場というイメージが共有できれば、部下も早めに報告してくるのではないでしょうか。

【ポイント】
報告がダメ出しの場にならないように注意。報告の目的をしっかり伝えて、時間の浪費を避けよう