時代や環境変化の荒波を乗り越え、永続する強い会社を築くためには、どうすればいいのか? 会社を良くするのも、ダメにするのも、それは経営トップのあり方にかかっている――。
前著『戦略参謀の仕事』で経営トップへの登竜門として参謀役になることを説いた事業再生請負人が、初めて経営トップに向けて書いた骨太の経営論『経営トップの仕事』(稲田将人著)がダイヤモンド社から発売。好評につき発売6日で大増刷が決定! 日本経済新聞の書評欄(3月27日付)でも紹介され大反響! 特別編として対談形式でお届けする最終回。対談のゲストは、カレーハウスCoCo壱番屋(ココイチ)の創業者、宗次徳二氏だ。宗次氏は、一代で築き上げた株式会社壱番屋を53歳で一切の役職を辞し、2002年に引退。翌年NPO法人イエロー・エンジェルを設立し、2007年にクラシック専門の宗次ホールを名古屋にオープン。事業継承した後の経営トップの生き様に、稲田氏が迫る! 好評連載のバックナンバーはこちらからどうぞ。
毎朝3時55分に起床を欠かさない
稲田将人(以下、稲田) 今でも宗次さんは、毎年の目標を設定されているのですか?
宗次徳二(以下、宗次) 去年並みですね。ここ数年来は毎年、去年並み。朝3時55分には必ず起きていれば、去年並みの成果はでますから。
稲田 3時55分ですか。宗次ホール(名古屋市中区栄)で演奏会のある日は、夜もお仕事をされますよね。
宗次 夜のリサイタルがあると、もう21時までは仕事ですね。1日15~16時間は仕事をしています。
稲田 そうなりますよね。
宗次 東京での講演会等の仕事だって、夜9時とか10時の最終電車で帰ると、帰宅は深夜0時過ぎになります。それでも、3時55分起床は崩す気もありません。このおかげで、朝ゆったりした時間で、1通でも多くお礼状も書けるし、良いことばかり。「百利あって一害もない」というのが早起きですから。
稲田 眠くなりませんか?
宗次 それは時にはなります。日中は少しね。でも不思議と、夕方5時ごろには、またハツラツとするんです。昼寝は原則しないですから、机に向かっている時、眠くなっても我慢して。昼寝をすると、起きたときの気怠さがもう、なんとも嫌ですから。
稲田 ココイチ時代と変わらない生活リズムなのですね。休日に関してはどうですか?
宗次 趣味もないし、アウトドアスポーツとかも一切しないので、休みもいらないです。ちなみに去年は、365日、毎朝3時55分に起きて全部仕事。そういうバカなところがあるんですよね。もちろん社員さんには、早起きしないからってイライラしたことは一度もないですよ。経営者だから、それを楽しんでできるんです。経営者の特権です。
稲田 ご自身で決めていることだからなのでしょうね。「今日は疲れているから休みたいな」というのは無いですか?
宗次 それは無いです。ただの一度もありません。
稲田 無いですか。
宗次 疲れが残っているのは感じますよ。そういうときは、ユンケルをすぐに飲んで、あとアリナミンA。ただ、休みたいとは絶対に思わない。「休んいでる場合じゃないぞ」って。楽しいからね。
稲田 奥様も同じような生活リズムを?
宗次 いや、それはしません。引退後は映画三昧です。「いままで一生懸命やってきたから」って。まあ、それはそうだな、と。講演を始め、外部からの依頼もすべてお断りしています。
稲田 奥様は、宗次ホールのお仕事はされていないのですね?
宗次 はい、しません。クラシックの音楽ホールは、利益が上がりませんから。やる都度赤字です。それでもね、意義があるからやっているんです。クラシックは、演奏家さんも一生懸命やっているでしょう。応援したいんです。また、多くの皆さんに聴いていただき、心やさしくなって欲しいのです。
稲田 音楽の話も伺いたいのですが、クラシックってやはりプロとして演奏されている多くの方々は、質もレベルも高いといつも感心します。幼い頃から練習し、音大などで専門の勉強も積まれてきていますし。ですが、世の中には常に需要と供給のバランスがありますよね。クラシックにおいては、提供している楽曲の質は高くとも、その供給に対して楽しむ人たちの数、つまり需要が少なく、バランスがとれていないのが現実だと思います。
宗次 小さな狭い世界ですからね。でも、廃れさせられないし、芸術性は高いですから。座って聞いていると、本当に気分が癒され良くなりますよ。やさしい気持ちになります。
稲田 世の中の人が、たくさん興味を示すような方向に行くと良いのでしょうが、クラシックの世界にあこがれている人は多いものの、「遠くにありて想うもの」。そこには、いわゆるマーケティング上の課題が、ほとんど手つかずのまま放置されていると思います。
宗次 娯楽性の高いポップスだとか、歌謡曲だとか、いっぱいありますからね。ついつい、そちらのライブへ行きますよね。だから「ライブに足を運ぶ10回か20回に1回、クラシックを入れてください」っていう想いですね。100年、200年、300年受け継がれたという芸術を楽しむ。「この曲は、あのベートーベンさんが作曲していて、その楽譜まで残っている」。そう思っただけでもね、私なんかワクワクしたりするんですけどね。