期待の課長・部長が「理想の経営幹部」に育たないのはなぜか「経営幹部が足りていない」根本的要因とは何か? Photo:PIXTA

ジョブ型人事制度で出世枠がポストの数に限定されるようになれば、誰もが一定ポジションまで上がれるようなことはなくなります。さらにその先、60歳定年後の再雇用では給与も役割も減らされて、やりがいすら失われてしまうかもしれません。しかしその一方で、企業における経営幹部のニーズは飛躍的に高まっています。活躍し続けたい人は多いのに、経営人材は足りない――。「経営幹部が足りていない」根本的要因とは何か、解説します。(人事コンサルタント 平康慶浩)

業績は好調でも
「経営幹部が足りない」ワケ

「経営幹部が圧倒的に足りないんです」

 そんな言葉をクライアントの経営層から伺うたびに、私が尋ね返す言葉があります。

「では、なぜ今のビジネスが成立していると思いますか? 経営幹部が足りていないのに」

 売り上げも右肩上がりで利益も十分に出ている。そんな業績好調と思われる会社ですら、「経営幹部が足りない」といった不平・不満を聞くことは決して珍しくありません。そこにはどんな課題が潜んでいるのでしょうか。

 私は人事コンサルタントとして、人事戦略・制度の設計、人材教育や制度の運用支援を行っていますが、特に近年増えていると感じるのは、経営幹部を育てたい、もっと優秀な経営幹部を採用したい、という相談です。

 ジョブ型雇用が取りざたされる昨今ですが、それでも多くの日本企業はメンバーシップ型で成長してきました。だから経営幹部人材についても、中途採用よりはまず社内育成を望む経営層が大半です。

 しかし、そんな取り組みを続けてきたけれど育たなかった、あるいはそもそも育てる対象が十分にいない、といった理由から、ヘッドハンティング会社に登録する企業も増えています。さらにヘッドハンティングで人材を獲得したとしても、鳴り物入りで採用した幹部人材が全然活躍してくれなかった。期待外れだった、という悩みも聞きます。

 会社はうまく回っているのに、経営幹部は足りない――。その矛盾の秘密は、思考の時間軸にあります。