埼玉県の公立小学校教師が未払い残業代などを求めて県を訴えた裁判が、9月に一審判決を迎える。公立学校教師は「定額働かせ放題」とやゆされる独自の法令に縛られ、過去の類似裁判はことごとく教師側が負けてきた。しかし、今回の闘いはこれまでとは一線を画す。特集『教師 出世・カネ・絶望』(全15回)の#4では、この裁判の勝負どころを示すとともに、原告の経験から教師の職場の今昔を比較する。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)
未払い残業代242万円を請求
応援のクラウドファンディングも
公立学校教師のいわゆる「残業代」は、「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(給特法)」により、給料表額(基本給)の4%に当たる教職調整額で済まされてきた。「定額働かせ放題」である故に「校長が教師の業務リストラをするインセンティブが働かない」と指摘されてきた。
公立学校教師の間には“諦めモード”が漂う。そんな中、定年間際の埼玉県の公立小学校教師(現在は再任用教師)である田中まさお氏(仮名)は2018年、公然とこれに異を唱えた。労働基準法を根拠に未払い残業代が11カ月分(659時間)、金額にして242万円に上るとして、県に請求する裁判を起こしたのである。
「ブラック職場改善の契機となるかもしれない」。裁判は全国の公立学校教師やその卵たちの注目を集め、学生らが支援事務局を立ち上げた。最高裁判所まで争えば数年続く見通しの闘いを援助するクラウドファンディングには、すでに50万円以上が集まっている。
今年5月21日、さいたま地方裁判所における最終口頭弁論で田中氏は「教師も一人の人間である以上、労基法が守られなければならない」、代理人弁護士は「自己犠牲を前提としたシステムはもう限界に達している」と訴えた。注目の判決は9月17日、下される。
過去の類似裁判は教師側の負けが続いた。しかし、今回の闘いはこれまでとは一線を画す。