本当は怖い働き方改革#5Illustration by Saekichi Kojima, Photo:OKRAD/gettyimages

未払い残業代を請求するビジネスモデルが確立され、ベリーベスト法律事務所、アディーレ法律事務所、勝浦総合法律事務所などが企業から未払い残業代を回収しまくっている。このモデルのみそは「任意交渉」で解決することにある。特集『本当は怖い働き方改革』(全9回)の#5では、未払い残業代請求ビジネスの裏側を明らかにした。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)

足柄SAにトラック運転手向け広告
「残業代をあきらめていませんか?」

 都内から東名高速道路を名古屋方面へ2時間弱走ったところにある足柄サービスエリア(SA)。荷物を運ぶ長距離トラックドライバーが休憩に利用しやすいこのSAに、興味深い広告が張られている。

「トラックドライバーの皆様 残業代をあきらめていませんか?」

足柄サービスエリアの広告東名高速道路の足柄サービスエリアにある広告。トラックドライバーをターゲットにしたものだ Photo by Ryo Horiuchi

 SA内のフードコートでラーメンをすすっていると、ちょうど目に入ってくる位置にその広告はあった。

「2年分の残業代は約450万円!!」と事例を挙げ、「ドライバーにも残業代は発生します。長時間労働になりやすいトラックドライバーは、多額の残業代未払いが生じやすい代表的な職種です」と説明。完全成功報酬で「残業代請求を弁護士が代理します」と続き、最後にフリーダイヤルの番号がでかでかと載っている。

 こうした広告やホームページでの誘い込みといったマーケティングから、企業へ請求する交渉手法まで、消費者金融業者への過払い金返還請求とよく似ている。実際、過払い金返還請求で稼いだ大手法律事務所が、そのスキームに倣いながら、任意交渉で効率よく回収するこの未払い残業代請求ビジネスの新しいモデルを確立したのだ。

 この2~3年で一気に広がっている新モデルは、労働者、弁護士、そして請求される企業にとっても、メリットがあるのだという。