就学前からデジタルツールを使う機会が増え、子どもにブルーライト(青色光)カット眼鏡を勧められるようになった。
しかし先月、日本眼科学会など眼科関連6団体が「小児のブルーライトカット眼鏡装用に対する慎重意見」を出した。
中身をみると、(1)液晶画面が発する青色光は自然光より少なく、網膜に障害が生じるレベルではない、(2)十分な自然光を浴びないと近視進行のリスクが高まるため、青色光カット眼鏡は近視予防という点で有害である可能性を否定できない、(3)米国の試験で、青色光カット眼鏡には眼精疲労を軽減する効果が全くないと示された、など推奨に慎重な理由が並んでいる。
実際、太陽光にも含まれる青色光は、動物の目の正常な発育と近視予防に欠かせない要素だ。
近視は眼球の眼軸長(目の表面から網膜までの長さ)が過剰に成長して、つぶれたような楕円形になり、ピント位置が正常より手前にずれることで生じる。
成長期の動物をわざと近視にした実験では、近視のヒナを、青色光を強化した環境下で飼育すると、眼球の健康的な成長に必要なコラーゲンやアミノ酸、神経伝達物質が増加し、軸方向に引っ張られて薄くなっていた網膜や脈絡膜(網膜の外側にある、血管が豊富な膜)の厚みが回復。間延びしていた眼軸長が短くなった。近視の進行を抑える可能性があるわけだ。
人を対象とした調査では、近視を治せる証拠はないが、屋外で遊ぶ時間が長いほど近視の有病率が下がることはわかっている。この傾向は眼球の発達過程にある低年齢の子どもほど明確で、少なくとも小学生までは、青色光カット眼鏡の心配より、ツールを利用する時間を考えた方がよさそうだ。
さて、若い世代の近視人口が9割を超えるシンガポールでは、小児の近視予防のために公園で遊んだらおもちゃ券がもらえるなど、国が積極的に外遊びを支援。実際に子どもの近視を減らしている。
一方の日本では、ようやく小中学生の近視についての実態調査が始まったばかり。自粛続きで外遊び時間が減っているからこそ、意識的に子どもを外に連れ出したい。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)