小中学生の「近視」有病率が20年前のおよそ倍に、慶大の調査よりPhoto:PIXTA

 家にこもってスマホにゲーム、夜遅くの塾通いなど、今どきの子どもを取り巻く環境はおよそ視力に良いとは言い難い。

 もともと人間の赤ん坊は遠視なのだが、成長とともに眼球が伸びてきれいな球形になり、角膜、水晶体を通した光が網膜で像を結ぶようになっていく。

 しかし、成長期の環境の影響で眼球が伸びすぎると、網膜の手前にピントが合ってしまい、遠くが見えにくくなる(軸性近視)。ほかに角膜や水晶体のレンズ機能に問題がある屈折性近視もあるが、子どもの近視の多くは軸性近視だ。

 慶應義塾大学眼科学教室の研究グループは、東京都内の公立小学校の児童726人と、私立中学校の生徒752人のうち、親から同意を得た1429人の屈折値(光を集める力)と眼軸長(角膜から網膜までの距離)を検査。児童・生徒の平均年齢は10.8歳で、男子が55.9%だった。

 その結果、小学生の近視有病率は76.5%で、小学1年生の時点で6割を超えていたのである。また、マイナス6ディオプトリー(D)以上の「強度近視」の有病率は4%だった。

 中学生の近視有病率は94.9%で、1~3年すべての学年で9割を超えた。また強度近視の有病率は11.3%だった。

 ちなみに、1999年に実施された12歳児対象の調査では、有病率は43.5%だった。わずか20年のうちに激増したわけだ。

 強度近視の場合、視力検査表の一番大きな文字を読み取ることができない。個人差はあるが表に2~3メートル近づいて、ようやく読めるくらいだ。また、長い間に眼球がもろくなり、黄斑変性や網膜剥離などの合併症で将来の失明リスクが上昇する。15歳までに10人に1人が強度近視になるというのは、かなり深刻な事態だろう。

 研究者らは以前、屋外で1日2時間以上過ごす子どもは、両親が近視でも近視になりにくいという研究結果を報告しており、今回も屋外で過ごす時間の減少が関係していると考察している。

 ちょうど過ごしやすい季節でもあるし、子どもと一緒に散歩に出ませんか?

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)