著者は音楽に未練を残しつつ、派手な感じがする広告の仕事を選んだ。この仕事でも「自分を表現したい」という意識は抜けていなかった。思うような結果を出せない日々が続く。

 ターニングポイントとなったのは、所属していた外資系企業で、本社から来日する幹部の接待担当になったときのことだ。このとき、接待は英語で「エンターテインメント」と呼ぶと知り、はっとした。エンターテインメントとは、相手を接待することなのだ。スタート地点はあくまで相手である。相手をよく知り、相手の立場に立って、自分たちにできる精一杯のことをしなければならない。

「相手からスタートする」ことの重要性に気づいてからは、目に見えて企画の成功率が上がった。人前で話すときは、聞き手が求めているものを意識するようになった。すると講演や研修講師の依頼が舞い込んだ。文章を書く際に読み手の視点を意識するようにしたところ、ブログが注目され、本の出版まで実現した。

 著者はこのように、「相手からスタートする」マーケター視点を仕事以外に広げることで、人から必要としてもらえるようになった。そうして人生そのものを変えることができたのだ。

 マーケティングを通して、相手の視点に立って価値を定義し、それをつくりだし、伝え、交換してもらうことで、自分も相手も物理的に、精神的に豊かになる。この思想を「生きる知恵」として生かそうというのが、本書の提案だ。

【必読ポイント!】
◆仕事もキャリアも人生も好転する
◇「マーケターのような生き方」4ステップ

◇STEP1:市場を定義する

 本書ではマーケティングを以下の4つのステップに分けている。

(1)市場を定義する:「自分がもっと輝く場所」が見つかる

(2)価値を定義する:「相手が本当に欲するもの」がわかる

(3)価値をつくりだす:「自分がやるべきこと」がわかる

(4)価値を伝える:「自分を必要とする相手」に見つけてもらう

 ステップ1の「市場を定義する」は、価値を提供する相手を決めることだ。誰を相手にすれば、自分を最大限に生かし、もっとも多くの人に自分を役立ててもらえるかを考える。ここで重要なのは、「自分ができること」と「相手にできる人の多さ」のバランスをとることだ。