副業でYouTuberとして活動するとしよう。「マーケターのように生きる」のであれば、視聴者が求めるコンテンツを提供しなければならない。「コンテンツの独自性」を意識するあまり、「自分ができること」ばかり考えてしまってはいけない。

 たとえば自分の専門分野が「特許」で、その知識を生かしてビジネスパーソン向けに特許制度を解説した動画をつくるとしよう。この動画は、独自性はあるが、視聴者は限られるだろう。

 そこで、特許法務という専門性を生かして「スペシャリストのキャリア」というテーマで発信すれば、「相手にできる人の多さ」は増えるはずだ。このように、市場選びにおいては、「市場の大きさ」と「自分にできること」のバランスを考え抜く必要がある。

◇STEP2:価値を定義する

 ステップ1で価値を提供する相手を決めたら、ステップ2では、いかにしてその相手の役に立つかを考えていく。ここで目指すのは、相手の声を聞いて、相手が求めているものを理解することだ。

 価値を定義するにあたっては、「価値の4象限」のフレームワークが役立つ。これは、横軸を「機能的か情緒的か」、縦軸を「顕在的(表に出ている)か、潜在的(裏に隠れている)か」とするマトリクスで、価値を4つに整理するものだ。このフレームワークを使って、軟水の天然水である「ボルヴィック」と、架空の無名ブランド「山の天然水」の違いを分析してみよう。

「価値の4象限」の1つ目は「実利価値」だ。実利価値とは、「機能的で」「顕在的な」価値を指す。これを簡単に言うと「いま、役に立つこと」だ。ノドの渇きを癒やしてくれるという点において、ボルヴィックと山の天然水に差はない。

 2つ目は「保証価値」だ。保証価値とは、「機能的で」「潜在的な」価値で、「何かあったときに役立つこと」である。水でいえば「水の品質がしっかりしていそうなこと」が保証価値にあたる。老舗ブランドのボルヴィックは強力な保証価値がある一方、山の天然水に保証価値は皆無だ。

 3つ目は「評判価値」だ。「情緒的で」「顕在的な」価値で、アクセサリーのように意味があることと言い換えられる。この意味は他人との関係の中で発生する。たとえば、おしゃれな人がジムで運動した後にボルヴィックを飲んでいたら絵になるだろうし、「さすが○○さん」と株も上がるだろう。