現代の資本主義に問題があるのかないのか。その答えは、立場が違えばがらりと変わる。特集『トップMBAが教える 新・資本主義』(全5回)の#4では、資本主義を巡り、金融と宗教の視点ががっぷり四つに組む。あなたはどちらの視点に、より共感するだろうか?(ダイヤモンド編集部副編集長 杉本りうこ)
金融街vs宗教界
資本主義巡る激アツ議論
MBA(経営学修士)のトップ校といえば、米ハーバード・ビジネススクールや米マサチューセッツ工科大学スローン校を思い浮かべる人が日本では多い。こういった著名校に肩を並べる、時に上回る評価を得ているのが、スペインのIESEビジネススクール。英エコノミスト誌の直近のMBAランキングで世界1位に選ばれるなど、長年にわたりビジネス教育のフロントランナーである。
IESEは1964年に発足。現在は世界5カ国6拠点(スペイン・バルセロナ、マドリード、独ミュンヘン、米ニューヨーク、ブラジル・サンパウロ、中国・上海)に展開し、世界のMBAでもインターナショナルな教育環境を誇る。
このIESEが今年、日本の大学院大学至善館と共同で、非常にユニークな講座を立ち上げた。「Future of Capitalism」、すなわち資本主義の未来を論じる講座だ。両校はスケールこそ違えども、「知識と優れた人格を備えたビジネスリーダーを育成する」ことをミッションとしている点で共通する。この両校が、21世紀のビジネスリーダーが学ぶべき教養として、資本主義の在り方そのものを講座化した。
本特集の#4(本記事)と#5『「究極の貧困」を知るバングラデシュの少年の目に、現代資本主義はどう映ったか』は、このユニークな講座のダイジェストだ。今回は「金融vs宗教」という異色の組み合わせ。両界を代表する論者が、資本主義についてそれぞれの視点から論じている。
金融界の視点を代表したのは、米シティグループ系列のシティ・ホールディングスで最高経営責任者(CEO)を務めたフランチェスコ・バンニ・ダルキラフィ氏である。シティは米国企業だが、ダルキラフィ氏は英ロンドン金融街で長年にわたりキャリアを積み、シティの要職を退いた現在もロンドンを主たる拠点としている。
このダルキラフィ氏が引用したのは、シティグループのサンディ・ワイル元会長から掛けられた言葉である。サンディ元会長は、巨額買収でシティを世界最大級の金融機関に育てた功労者だ。この大物はこう言ったという。