資本主義がもたらす問題の最たるものは、格差の拡大である。では国家間格差の底辺にいる最貧国から見た資本主義とはどのようなものだろうか。特集『トップMBAが教える 新・資本主義』(全5回)の最終回では、アジアの最貧国であるバングラデシュからの視点だ。元ストリートチルドレンで、世界でも究極レベルの貧困を経験した少年から見た資本主義のリアルを伝える。(ダイヤモンド編集部副編集長 杉本りうこ)
究極の貧困をサバイブした
少年が見た資本主義とは
バングラデシュは発展途上国の中でも最も開発が遅れた、いわゆる最貧国の一つだ。近年はアパレル産業の外資投資が進むなどで、年7%を超える経済成長が続いている。それでも2019年時点の1人当たり名目GDP(国内総生産)は1906ドルと、日本の約20分の1の水準である。
発展途上にあるこの国で、経済と社会を支える重要なプレーヤーがNGO(非政府組織)だ。今回のMBA講座(講座については本特集#4『ロンドン金融街とバチカン徹底討論!資本主義をめぐる「金もうけvs倫理」の正面衝突』を参照)では、ストリートチルドレンを支えるNGO「エクマットラ」がバングラデシュの現状を伝えている。
エクマットラは路上生活を余儀なくされている子供たちを対象に、基本的な読み書き計算を教える「青空教室」や、高等教育や職業教育を受ける「アカデミア」を提供している。単にスキルや知識を教えるだけでなく、生き抜く意欲を引き出す情操教育もしているのが特徴だ。
このエクマットラによって教育の機会を得てきた青年が、シハブ・シャラー・スモン氏だ。スモン氏の父親は人力車の引き手という職を持っていたが、家庭は非常に貧しく、少年期には首都ダッカのストリートチルドレンとなった。その頃にエクマットラのスタッフと知り合い、青空教室で学ぶようになる。現在は地元の大学に進学しながら、エクマットラのスタッフとしても働いている。